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9月以降、最も勝ち点を稼いだのは?
セリエの弱小チームに起こった革命。
posted2016/12/02 07:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
9月最後の週末から、欧州5大リーグで最も勝ち点を稼いだチームはどこか。
レアル・マドリーやチェルシーではない。バイエルンでもユベントスでもない。アタランタだ。
“9月最後の週末から57日間の8節分で”という条件付きではあるが、7勝1分で勝ち点22を荒稼ぎしたのは彼らだけだ。セリエAのEL出場圏に急浮上してきた。
内容も奮っている。ナポリやインテル、ローマといった強豪を次々に撃破しながら、クラブ史上最速・最多勝ち点ペースで勝ち進むアタランタは、11月27日の14節ボローニャ戦にも快勝。6連勝目を上げて、5位の座をがっちりキープした。
「嘘みたいだ」
監督も選手も、誰も予想していなかった快進撃はどこまで続くのか。
開幕5戦で4敗、しかしそこから反撃が始まる。
北都ベルガモの育成王国として知られるアタランタは、今季、稀代の戦術マニアとして知られる智将ガスペリーニを新監督に迎えた。
ガスペリーニは、昨季まで延べ8シーズンにわたって指揮を執ったジェノアで、伝説の攻撃的布陣「3-4-3」を甦らせ、見事に運用して見せた筋金入りの攻撃サッカー信奉者だ。
しかし、若手育成を身上とするアタランタはプレーンな「4-4-2」を長く拠り所としてきた。
そこに招かれたガスペリーニはいわば劇薬で、クラブ全体が新指揮官独特の哲学を消化するには、ひと夏のキャンプでは時間が足りなかった。
アタランタは開幕からつまずいた。5戦4敗で19位。
もう後がなかった。最下位クロトーネと強豪ナポリとの連戦に、新監督ガスペリーニは自らの進退を賭けた。
中立地ペスカーラで行われたクロトーネとの難ゲームをFWゴメスの今季初ゴールなどでモノにすると、続く7節ナポリ戦では劣勢必至と見られていた下馬評を覆し、前半9分に奪った虎の子の1点を守り切って強豪に今季初の土をつけた。