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ナックルボーラー大家友和の大勝負。
41歳でMLB、夢への公開トライアウト。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byKatsushi Nagao
posted2016/11/21 07:00
過去の実績を知る人には「なぜ?」の疑問が浮かぶかもしれない。しかし大家は再び大リーガーになりたいの一心で、ナックルに磨きをかけている。
「速いナックルを投げる練習をしないと……」
大家は横浜退団後の'13年に日本の独立リーグに在籍。翌'14年にはブルージェイズとマイナー契約し、キャンプ中に自由契約となったものの、米国の独立リーグで一年間、先発ローテーションを守って見せた。今年は日本の独立リーグ福島でプレーし、16試合で7勝4敗、防御率2.82の好成績を残している。
「日本の独立リーグでこれ以上やっても、ナックルボーラーとしての成長はもうないでしょう。遅いナックルで結果を残すことを優先して投げるんじゃなく、バットを振り回してくるこっちのバッター相手に速いナックルを投げる練習をしないと、今以上は望めない」
大家は公開トライアウトで4人の打者相手に約60球を投げた。「えげつない球」は冒頭で挙げた以外にも何球かあった。大家の手を離れた瞬間、バッターに向かってくる。それが手元で大きく変化してストライクゾーンに収まる。本当の試合になったらそう簡単にはいかないだろうが、見るべきものはあった。
受けた捕手も「しっかり打つのは難しいだろうな」。
ナックルボールに苦戦した左バッターは、オリオールズの有望株ランキング12位で2015年のドラフト1巡目(全体25位)指名で入団した22歳のD.J.スチュワート外野手だった。
「もう少し慣れたら、もっと打てそうな気もするけどね」
と、少々諦めが悪いコメントを残した。マイナー4年目を終えたばかりの25歳、オースティン・ウィン捕手にも大家の球を受けた印象を聞いた。
「緩急も使えるし、最後の最後で変化するから、打者にとっては芯で捉えるのが難しい。受けるのだって簡単じゃない。僕は以前にもナックルボールを受けたことがあるから何とかなったけど」
とウィンは笑った。そして捕手らしい、落ち着いた口調で彼は言葉を続けた。
「(ウォームアップの)ブルペンで受けている時から、これをしっかり打つのは難しいだろうなと思った。最後の最後で変化するし、あとはストライクゾーンで勝負できるかどうかという部分だけだったんだ」