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ナックルボーラー大家友和の大勝負。
41歳でMLB、夢への公開トライアウト。
posted2016/11/21 07:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Katsushi Nagao
その一球は、カメラのファインダーから突然、姿を消した。
“What a……!?”と言いながら、左打席のバッターが大げさに動いたのが分かる。シャッターを押して打撃ケージの中を覗き込むと、キャッチャーが捕球した直後だった。内角低めの際どいコースだが、ストライクゾーンを外れている。大きく打席を外したバッターは、苦笑いしていた。
首を振っている。気持ちは分かる。ファインダー越しに見たその一球は、確かに一瞬、打者に向かってやって来たのだ。そう、彼は球を避けようとしたのだ。
“It was nasty, ha?”
「えげつない球だったよな?」。捕手がバッターに問いかける。バッターはそれには答えず、仕切り直して次の一球を待った。
次の一球が来る。バットを思い切り振り、乾いた音が響く。アリゾナの青空に白球が舞い上がり、無人の外野にポトリと落ちた。中堅手がいたら楽に追いついて捕球している。やや左中間寄りに飛んだ平凡な中飛といったところだ。
40歳の大家にメジャーのスカウトが駆けつけた。
マウンドにいたのは大家友和だった。10月2日、日本人歴代5位のMLB通算51勝を挙げた40歳右腕は、たった一人の公開トライアウトを受けていた。
大家は秋季リーグに参加していたオリオールズの有望株たちを相手に、実戦形式でナックルボールを投げ込んでいた。その姿をレイズ、オリオールズ、ロイヤルズ、パドレス、マリナーズのスカウトたちが見つめていた。
以前のコラムで書いたが、横浜(現DeNA)でも通算8勝を挙げた大家は、2011年の右肩手術を契機にナックルボーラーに転向した。それは単にナックルボールという球種を増やしただけではない。角度や風向きに影響されるため、不規則な変化となる魔球が全投球の約9割を占める“ナックルボーラー”となったのである。