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2016年ドラ1候補は田中正義ら8名。
外れ1位を取るなら投手よりも野手? 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2016/10/17 11:00

2016年ドラ1候補は田中正義ら8名。外れ1位を取るなら投手よりも野手?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

右肩の不安を報じられている田中だが、1位指名は確実だろう。むしろスカウトと球団の力量は田中の“外れ1位”に見えるのかもしれない。

外れ1位の投手は「即戦力候補」が多いが野手は……。

 どうしてこういう現象が起きるのだろうか。外れ1位で指名されるピッチャーは「即戦力候補」と呼ばれる大学生、社会人が多い。そもそも「即戦力候補」という高い評価を得られるピッチャーが毎年それほど多いのかという疑問がある。それにくらべて野手は1、2位の上位指名自体が少ない。それは力のある野手が大して注目されず、そのへんに放って置かれている状態を想像してもらえばいい。

 今年の上位候補の野手は次の選手たちだ。

◇高校生……九鬼隆平(秀岳館・捕手)、古賀優大(明徳義塾・捕手)、細川成也(明秀日立・外野手)、鈴木将平(静岡・外野手)

◇大学生……京田陽太(日本大・内野手)、吉川尚輝(中京学院大・内野手)、大山悠輔(白鴎大・内野手)、石井一成(早稲田大・内野手)

◇社会人……源田壮亮(トヨタ自動車・内野手)、原口大陸(JR九州・内野手)

 投手にくらべて数はぐっと少ない。しかし、プロ野球の一軍は野手17人、投手11人ほどで構成され、1シーズンを戦っていくのである。ドラフト前に名前が知られていなくても、低い評価でプロ入りしても、プロ生活の中で必ず必要とされる時がくる。それは偶然ではなく必然としてやってくる。

戦略のある球団にしかドラフトの勝利は訪れない。

 荒木雅博は福留孝介(近鉄)、原俊介(巨人)の外れ外れ1位、坂口智隆は雄平(ヤクルト)の外れ1位、T-岡田は辻内崇伸(巨人)の外れ1位、坂本勇人は堂上直倫(中日)の外れ1位、山田哲人は斎藤佑樹(日本ハム)、塩見貴洋(楽天)の外れ外れ1位、安達了一は高橋周平(中日)の外れ1位……T-岡田と山田以外は野手を獲りに行って抽選で外し、外れ1位(あるいは外れ外れ1位)でも野手を獲りに行って逸材を手にしている球団ばかりである。

 投手を獲りに行くが抽選で外して、やむを得ず残っている候補の中で評価の高い野手を外れ1位で指名しました、という球団には野球の神様は微笑まない。戦略のある球団にしかドラフトの勝利は訪れないのである。

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