マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト直前、スカウトが語る悩み。
腕の見せ場は4~5位の「井端や赤星」。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/10/13 17:00
井端弘和は1997年のドラフト5位で中日に入団した。中位以下の指名でスターを獲るのがスカウトにとっての見せ場なのだ。
「未練が残るのは、渋く光ってる選手のほうなんですよ」
大阪ガス・青柳匠遊撃手(26歳・179cm72kg・右投右打・亜細亜大)。
梅津とは対照的に、スマートな身のこなしで打球を吸収するようにさばくフィールディングと、変化球もしなやかなスイングで右中間、左中間へ弾き返すバッティング。ここ一番で、野手のいない場所を抜いていく勝負強さは、巨人・坂本勇人タイプだろうか。
いずれも、都市対抗野球でおなじみの、社会人球界を代表する内野手にのし上がり、今もチームの中枢としてプレーを続けている。
「不思議と、その年の“目玉”みたいな大看板のことを、ああ、あの選手がいれば……みたいに未練を残すことはないんです。いつまでもこだわってるのは、梅津や青柳みたいな渋く光ってる選手のほうなんですよ」
井端や赤星のような選手を推せるかが腕の見せ所。
スカウトたちが最も興味を持つのは、他球団の“下位指名”の顔ぶれだという。
「将来エースになったり、ローテーションピッチャーになったり、クリーンアップを打つような選手は、自分たち、わかってるから。逆に、チームになくてはならない脇役をどれだけ獲れるかが“腕”だと思ってます。井端(弘和・元中日、巨人)とか赤星(憲広・元阪神)だって4位、5位でしょ。彼らほどいかなくても、たとえば今の選手だったら、西武の渡辺直人みたいな選手を、どれだけ確信を持って推せるのか。それが、本当のスカウトの腕じゃないですかね」
そう言いながら、今年もそのスカウトは最後の最後まで、迷い、悩んでいる。
「亜細亜の法兼(駿・内野手・高知高)なんか、絶対面白いと思ってるんだけど……。足もあるし、野球も上手いし、勝負度胸もあるし、肩も治ってるみたいだし。レギュラーはちょっときびしいですよ、プロじゃ。でもね、ああいうのがいると、ゲームになった時に、ほんとに重宝するんですよ」