話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
G大阪を完全に粉砕した浦和の“右”。
駒井善成のドリブルは「やっかい」だ。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/10/04 11:00
プラチナ世代の1人であり、宇佐美貴史がドリブルを絶賛したというエピソードでも知られる駒井善成。
対峙した藤春を疲労困憊に追い込んだ仕掛け。
サイドから攻撃されるとガンバの選手が完全にボックス内に入って守備をするのを分かっていた柏木は、あらかじめ駒井に「マイナス(のパス)を狙って俺のところを見ててくれ。絶対にフリーやから」と声をかけていたという。
駒井はドリブルで深いところまで行くとみせかけて、横の柏木にパス。柏木はボックス内で一度引いて、抜ける動きを見せた武藤にダイレクトで出した。ここで勝負ありだった。
そして、ここから駒井のショータイムが始まった。前半11分、槙野智章に絶好のパスを出して決定機を演出、13分には右サイドから中に流れてシュートを見せ、32分には右から1人でドリブルで持ち込んでシュートを打った。ガンバの大森晃太郎を前半でベンチに追いやり、対峙する藤春にまったく仕事をさせなかったのである。
藤春は試合後、疲労困憊の体だった。
「まったく上がることができなかったです。駒井くんがキレキレなのは分かっていたけど柏木くんがいて、それに森脇くんが上がってきてずっと3-1でやられていたんで、かなりキツかった。駒井くんはやっかいですね。スピードに乗ったら止められないし、体を揺らしてタイミングをずらすのがうまい。僕の中ではミキッチと同じかそれ以上、イヤな相手です」
ようやく取り戻した「思うようなキレ」。
一方、駒井はしてやったりの表情を浮かべてこういった。
「最初は常に縦を狙っているんですけど、藤春さんのポジショニングが縦を切っていて、しかもスピードがあるんで、そのまま行ってもキツイなって思ったんです。それで中で揺さぶりつつ縦に行くとか、駆け引きして狙いを絞らせないようにしました」
ドリブルだけではない。
京都サンガ時代から豊富な運動量で疲れ知らずだったが、この試合でも後半終了間際、カウンターで30m以上全力で走ってゴールに向かった。
「ようやく体に力が入って、思うようなキレでボールを運べるようになったんです。これを継続していくことが成長につながると思います」