野球のぼせもんBACK NUMBER
再び無死満塁を耐えた「森福の13球」。
窮地ソフトバンクに勇気を与えるか。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/09/24 07:00
日本ハムとの直接対決で喫した連敗。それでも森福が見せた気迫のピッチングはソフトバンクファンから喝采を受けた。
勝負球スライダーを生かし切る配球で併殺、三振。
まず対するは、球界一いやらしい打者の中島卓也だ。この日の第1打席では10球粘ってフォアボールを選び、次打者の逆転タイムリーの呼び水となった。早めに追い込みたいところで、初球は外角へのストレートでファウルを打たせた。その後も4球目まで直球勝負。2ボール2ストライクの平行カウントとした。
そして勝負球はスライダーだった。外へ逃げていくボールに、中島は打ちに行ったが、バットの先っぽだ。投手ゴロになった。森福は冷静に打球を処理してホームに送球し「1-2-3」の併殺打を完成させた。
しかし、まだピンチは終わっていない。2アウト二、三塁。続く1番西川遥輝はこの試合の2回にタイムリーを放ち、連続出塁試合数も「42」まで伸ばしていた。好調のリードオフマンに対しても、森福は直球中心で勝負を挑んだ。森福のストレートは130キロそこそこだ。それでも、西川のバットを押し込んで、ファウルを打たせてカウントを整えた。
「西川に関しては前の対戦でも、その前もスライダーを打たれていた」
そして8球目、勝負球にはスライダーを選んだ。それでも、相手に直球を意識させていた分だけタイミングを完全に外すことに成功。空振り三振に仕留めた。
「配球勝ちでしたね。いい配球だったと思います」
左拳をぐっと握り、吠えた。計13球で満塁のピンチを乗り切ったのだ。
'11年の日本シリーズ第4戦でもまったく同じ状況に。
「森福の13球」だ――。
思わずそう声に出した。5年前を思い出させる快投だったからだ。
'11年の日本シリーズ。第7戦までもつれ込み、最後はホークスがドラゴンズを4勝3敗で振り切ったのだが、勝負の分かれ目はホークス1勝2敗で迎えた第4戦にあった。2対1とリードした6回ノーアウト満塁でマウンドに送り出されたのだ。
捕手の細川亨からは「先発のホールトンが調子が悪い。早めに準備をしとけよ」と促されていた。森福自身も「この年はホールトンの次に自分が投げるケースが多かった。行くなら2番手だろうと思っていた。だからランナーが出た時点で準備は始めていました」と万全ではあった。