セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
「25人枠」で飼い殺しの“不良中年”。
天才カッサーノに新天地はあるのか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/09/08 11:40
かつて長友佑都の“兄貴分”として知られたカッサーノだが、昨季は明らかにウェイトオーバーで試合に臨んでいた。
生まれ故郷バーリですらやんわりと受け入れ拒否。
すでに昨シーズン中から、不良中年と化したカッサーノの扱いに手を焼いてきたフェレーロ会長は、初夏のうちこそ「どこか別のクラブでプレー機会を探してはどうかな」と柔和な口調で移籍を薦めていたものの、移籍話にも契約解除にも頑なに応じようとしないカッサーノに、次第に態度を硬化していった。
8月上旬、クラブのスペイン遠征に帯同しなかったカッサーノは、ウディネーゼへ放出の噂が流れると「ウディネより、エンテッラに行く方がマシ」というコメントで地元紙を賑わせた。
突然、有名選手から名指しされたエンテッラは、わずか2年前にセリエBへ初めて昇格したばかりの小さなクラブで、本拠地キアバリはジェノバから車でほんの40分の距離だ。
「おらが町にあのカッサーノが?!」と人口3万人に満たない町は沸き立ったが、件のコメントは後にカッサーノ夫人のツイッターを通じて否定され、エンテッラの夢は儚く散った。
生まれ故郷バーリへの復帰話も持ち上がったが、新監督ステッローネから「カッサーノは一流プレーヤー。だが、私のサッカー観にはそぐわないと思う」とやんわり受け入れを拒否された。
やはり戦力外とされたアルジェリア代表MFメスバーと2人だけの練習をこなしながら、カッサーノの夏は静かに冷たく過ぎていった。
カッサーノ以外の実力者も“窓際族”になる危機。
警鐘は鳴らされていた。
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は、8月下旬にイタリア全土で膨れ上がった余剰人員問題を扱う特集記事を組んだ。
その時点で、契約下にありながら戦力外とされている選手はセリエAだけで52人もいて、契約切れとなった者も含めると3部以上のプロリーグ全体で失業危機にある人間は529人にも上る、というショッキングな数字が挙げられていた。
“窓際族”には、カッサーノ以外にもMFエルナネス(ユベントス)やFWエルカドゥリ(ナポリ)といった働き盛りの実力者もおり、問題の根源は各クラブの編成方針や補強戦略のあり方にあることが指摘された。