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「25人枠」で飼い殺しの“不良中年”。
天才カッサーノに新天地はあるのか。
posted2016/09/08 11:40
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
悪童カッサーノが、“飼い殺し状態”だ。
所属するサンプドリアは開幕から2連勝と好発進したが、そこに未完の天才の姿はなかった。
2試合ともにベンチ入りすらしなかったカッサーノは、もう数週間も練習場のロッカールームから閉め出されいる。チームの全体練習と異なる時間帯を指定され、一人で練習するカッサーノが着替える場所は用具係の控室、という不遇ぶりだ。
「俺はジェノバを離れる気はないね」と強がってはいるものの、カッサーノはこのままグラウンドに立てない可能性が高い。少なくとも次の移籍市場が開く冬まで、彼にはプレーする機会がない。
「25人登録枠」を大義名分に新監督がリストラ実行。
理由は、セリエAの「25人登録枠」だ。
今季から、セリエAに参戦する20クラブへ登録人数制限が厳格に適用されるようになった。
トップチームの出場登録選手の総数を25人に制限する制度は、昨季からリーグ機構とサッカー協会の肝いりで試験導入が始まった。
自国若手選手の強化や国内クラブの競争力向上を目的として、クラブ自前の育成部門出身者4人と国内の別クラブ育成部門出身者4人の登録が義務付けられた。21歳以下の選手起用についての制限は設けられていない。
今夏、サンプドリアの新監督に前エンポリ指揮官ジャンパオロが就いた。
昨季、選手起用の妙でリーグ屈指の貧乏クラブを10位に導いた智将は着任早々、今夏34歳になったカッサーノを戦力と見なさないことをフロントに明言した。
選手数に制限ができたことで選手層の充実度は下がったかもしれないが、プレー機会の少なさから不満を表に出して、チームの和を乱す選手をリストラする大義名分ができたのだ。
サンプドリアとの契約をあと1年残すカッサーノは、どうあってもジェノバの町を離れたくないらしい。