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「25人枠」で飼い殺しの“不良中年”。
天才カッサーノに新天地はあるのか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/09/08 11:40
かつて長友佑都の“兄貴分”として知られたカッサーノだが、昨季は明らかにウェイトオーバーで試合に臨んでいた。
直接会談をすっぽかしてサンプ会長の逆鱗に触れた。
リストラ対象となった選手は、働かなくても給料は入ると喜んでもいられない。オーバー30の選手が半年も1年もプレーしなければ、移籍市場での評価は下落の一途だ。キャリアの危機に直結する。
クラブとしても、ルールで起用できない保有選手を結果的に飼い殺しにするよりは、レンタル放出でもして年俸を移籍先に負担してもらった方が断然いい。
8月末、フェレーロ会長は状況打開のためにカッサーノへ直接会談をもちかけた。しかし、不良中年カッサーノは約束をすっぽかした。
いよいよ堪忍袋の緒を切らした会長は、悪童を突き放したのだった。
「誰の得にもならないというのに、カッサーノはいよいよクラブと本気の喧嘩をする気らしい。やつの興味は年俸(70万ユーロ=約8100万円)だけだ。そんなに欲しいなら金はくれてやる。もはや好きなようにするがいい」
クラブ公式HPからカッサーノの顔写真は消えた。
移籍市場は閉まり、サンプドリアは名より実をとった。
MFコレアをセビージャに売り、MFソリアーノをビジャレアルへ放出して、夏の移籍市場で18億円近い利益を得た。
4-3-1-2のトップ下の先発には真面目なMFアルバレスがいて、バックアッパーに900万ユーロを出してアンデルレヒトからMFプラートという気鋭の22歳を獲った。残留達成には十分なFWも揃っていて、カッサーノの働き場所はどうにも見当たらない。
戦力外扱いされていた同僚メスバーは、メルカート最終日にサンプとの契約を解除し、昇格組クロトーネと1年契約を結んだ。
MFエルナネスもFWエルカドゥリも、それぞれのクラブの25人枠へ登録期限の9日までにそれぞれ滑り込めそうだ。
しかしカッサーノは、今も契約上、サンプドリア所属の選手だ。だが、二カっとした笑顔の顔写真は、クラブHPから削除されている。
クラブ黙認の下、プリマヴェーラ(ユース・チーム)の練習に混じり、用具係の控室で着替えることはなくなった。