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イチローが向かう3000安打の“次”。
いわくつきの名打者と、逸話の数々。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/08/30 07:00
8月29日時点の3009安打は歴代28位。主砲スタントンの故障で出番も増えている。
キューバ生まれのパルメイロは禁止薬物で大失態。
イチローがあと11安打で追いつくラファエル・パルメイロ氏は、キューバの首都ハバナで生まれ、キューバ革命後に米国に移住した。米国の大学で頭角を現し、1985年にカブスにドラフト1巡目指名で入団。レンジャーズでプレーした2003年には、なぜかバイアグラのCMに出演し、同年に史上19人目の通算500本塁打(中南米出身選手としては元カブスのサミー・ソーサに次いで2番目)を達成した名選手だ。
ところが2005年に筋肉増強剤を使用していた疑いでアメリカ議会特別委員会での証言を求められ、「私はステロイドを使ったことがない。以上」ときっぱり話したのに、史上4人目の3000安打&500本塁打を達成した同年の夏、薬物検査で合成ステロイド使用の陽性反応が出て10日間の出場停止処分を受けてしまった。
2011年には米国野球殿堂の候補者となったものの、禁止薬物との関与が理由で投票では選出に必要な75%以上の支持を集めることができず、その3年後には得票率が足切り基準の5%を下回ったために殿堂入りの投票対象からも除外されている。通算3000安打を達成しながら、殿堂入りを逃したのは、野球賭博に関与して永久追放処分を受けたピート・ローズ以来、史上2人目である。
「イチローとマツイの打ち方も違うし……」
こう書いてしまうとダーティーなイメージになってしまうが、当の本人はとても気さくな人だった。2003年の初夏、ボストンのフェンウェイパークのビジターチーム側ダッグアウトで、打撃についていろいろ話したのをよく覚えている。
「打撃のスタイルってのは人の顔ほど種類がある。イチローとマツイ(松井秀喜)の打ち方も違うし、私とパッジ(イバン・ロドリゲス捕手。前年までの同僚で1999年のア・リーグ最優秀選手)も違う。でも、球をよく見て打つっていう最後の部分だけはいつも同じなわけで、そこに至るまでのアプローチに、その人の性格や考え方が反映されるんだと思う」