Jをめぐる冒険BACK NUMBER
興梠、塩谷、藤春それぞれの五輪。
責任ではなく恩返しを見せて欲しい。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJMPA
posted2016/08/19 11:30
リオ五輪で、代表そのものへの意欲が興梠慎三の中で変化したのだとすれば、今後の展開に期待が高まる。
手倉森監督「責任を取るのは俺だから」
「(オーバーエイジとしてのプレッシャーは)やっぱり意識しましたね。意識しないようにと思っても、どこかで意識してしまった……。初戦もそれで気負いすぎたのかなと思います」
そんな塩谷の肩の荷を取り除いたのが、手倉森監督だった。
「初戦が終わったあとテグさんがオーバーエイジだけを集めて『お前らは責任を感じなくていい。責任を取るのは俺だから』と言ってくれて、それで気持ちが楽になって。それが2戦目、3戦目のプレーに繋がったんじゃないかと思います」
A代表に定着しているわけでもなく、世界大会での経験があるわけでもない。ほかにも候補がいるなかで、チャンスを与えてくれた指揮官の期待に応えられなかったことが、塩谷の表情を暗くさせていた。だが、塩谷は分かっている。その恩に報いるには何をしなければならないのかを。
「ここでの経験を今後のサッカー人生に生かさなければ、呼んでもらった意味がない。今後、自分がもっともっと上のレベルになって、いつかテグさんに会ったとき、『シオを呼んでよかった』と言ってもらえるような選手になりたいと思います」
年下の選手の中に3人だけ加わるオーバーエイジ。当然のことながら、助っ人の意味合いは強くなる。ましてや今回は、結束力をひとつの武器にアジア王者に輝いたチームに加わったため、難しいシチュエーションだったのは間違いない。
3人が味わった悔しさは、23歳以下の選手たちが味わったのとはまた、異なる種類のものだったに違いない。彼ら3人がこの苦い経験をどう昇華させるのか――。
さっそく週末のJリーグで彼らのプレーが見たいと思う。