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G1クライマックス、26年目の変貌。
優勝者ケニー・オメガのジェラシー。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2016/08/17 11:00
最初の来日は飯伏幸太らが所属していたDDTによって果たされたオメガ。G1クライマックスでは、自らの集大成ともいえる戦いぶりで会場を沸かせた。
カナダの田舎でプロレスを始めて、14年かかった。
オメガはカナダのウィニペグ出身。ウィニペグの名もないローカルのプロモーションでレスラーになって14年目、日本に来て8年になる。
国技館でノスタルジーに浸る必要はなかった。だが、体は勝手に動いていた。
「トレーニングして、レスリングをして14年もかかった。いや、たったの14年だ。ラッキーだった。いいか。俺の夢がかなったんだ。俺が一番だ。これから、みんな俺を好きになるだろうよ。そうなって当然だろ」
オメガはリング上で、最初に英語でたっぷりしゃべった後、ファンに向かって日本語で付け加えた。
「俺はそっちには行かない」
日本語としては「あっち」のほうが正しいだろうが、「そっち」とは世界最大のプロレス団体、アメリカのWWEのことだ。
オメガは「俺のホームはここ日本だ」と宣言したのだ。
「まるで死を覚悟したかのうように挑んでくる」
一番をかけた後藤との戦いは26分間に及んだ。
前日、28分間も戦うことになった内藤戦と合わせると、約1時間のハードな決勝戦になったと言ってもいいかもしれない。試合の内容としては内藤との試合の方がスウィングしていただろうけれど、優勝戦の激しさは、また特別だった。
「正直、日本のレスラーは心が強いよ。まるで死を覚悟したように戦いを挑んでくる。才能だけでいったら、俺はあいつらの2倍、いや、それ以上、あるだろう。でも、あいつらはあきらめないんだよ。ああ、俺は違うよ。俺はカネと名声がほしいだけだ。
だから、みんなの見ている前で、俺はあいつらの心をへし折らなくちゃならないんだ」
優勝を決めたオメガは、あまりにも気持ちが良いせいか、至極雄弁だった。
「ついていたよ。(Aブロック最終戦で後藤と戦って負けた丸藤正道)マルフジは、知ってるだろう? ちょっとは有名だろう? 俺と同じようにヒザを使うやつだ。彼には感謝している。たっぷり後藤を痛めつけておいてくれたからね」
こうして、オメガは後藤からフォールを奪うことに成功した。
「片翼の天使」という名のフィニッシュ・ホールドは変形のパイルドライバーだ。オメガの大好きなゲームのキャラクター、セフィロスのテーマでもある。
優勝旗はリーダーとして「Bullet Club」の旗に置き換えた。
だが、一番の証であるG1の優勝トロフィーは、しっかりと掲げて周囲に見せつけていた。