“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
インハイは「就活ラストチャンス」。
4人の3年生が見せたJ内定への執念。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/08/17 08:00
高は市船のコンダクターとして中盤に君臨。9度目のインハイ制覇を成し遂げる原動力になった。
東福岡を撃破した昌平MF針谷にも大きな賞賛が。
インターハイ初出場の昌平で攻撃の中枢を担う、松本と針谷もこのインターハイで人生が変わろうとしている。もともと今年のチームの前評判は高く、2人も注目の存在だった。だが、Jクラブに声が掛かるまでには至っていなかった。
しかし、今大会では2回戦で東福岡を3-2で撃破をすると、一気に準決勝まで駆け上がって行った。準決勝で市立船橋に敗れたが、5試合でチームの総得点10ゴールを、FW本間椋を含めた3人で叩き出した(本間4、松本3、針谷3)。
この3人の中で一番評価が高かったのが針谷で、彼のパスセンスの高さと、ボールキープのうまさと姿勢の良さは、賞賛の声が上がった。8月11日から静岡で開催されたSBS杯U-19日本代表に選出されるなど、注目度は格段に上がり、Jクラブの興味も高まっている。
針谷の盟友、松本は本領発揮とはいかなかったが……。
一方で松本は本間、針谷に比べて、持っている力をフルに発揮したとは言えなかった。
「自分がもっと上手くならないと、このチームは上がって行かない。一つの練習に対しても率先して声を出して、戦う気持ちを前面に出して行くようにしています」と、今年に懸ける想いが強く、貪欲な姿勢を貫いてきたが、今大会は左サイドからのダイナミックな仕掛けが影を潜め、躍動したとは言い切れなかった。
だが今後、彼のポテンシャルに目をつけたJクラブが現れれば、彼は巡って来たチャンスを掴まんと、より研ぎ澄まされた闘争本能と打開力を駆使して、さらに奮闘を見せるはずだ。
ラストチャンス。
真夏の広島を全力で駆け抜けた4人の男たち。彼らが放った覚悟の輝きは、周りを引きつけ、自身の将来を切り開こうとしている。
もちろん、そこにはチャンスを掴みきれない可能性は確かに存在する。だが、彼らが心の底から紡ぎ出した覚悟は、そんなネガティブな要素をかき消すほど、意欲に満ち溢れている――。