セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ナポリのイグアインロスは埋まるか。
マラドーナはタイトルを叫ぶが……。
posted2016/08/10 11:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
マウリツィオ・サッリは怒っている。
ナポリの指揮官は、特別に目をかけていたFWイグアインのユベントス移籍を未だに許せないのだ。
「(移籍する前に礼儀やケジメとして)イグアインが電話の1本ぐらいよこしてくれるものと信じていた。わしももう若造ではないから、滅多なことでは動揺しないつもりだったが、ユーベのユニフォームを着たやつの姿をニュースで見たときには、心穏やかではいられなかった。個人的に苦々しく思っとるよ」
怒っているのは監督だけではない。
同業者である元チームメイトたちはイグアインの選択を尊重して口をつぐんでいるが、デラウレンティス会長は「裏切り者イグアイン」と糾弾し、ナポリっ子たちも昨季までのエースの名の入ったユニフォームを便器に叩きこんだり、街角の卑猥な落書きで罵ったりすることで怒りをぶつけた。
“イグアイン・ショック”が残した失望と爪痕は深く、イタリア北東の山間で行われたプレシーズンキャンプの間、サッリは沈黙を続けた。ヘビースモーカーの指揮官が人前で口を開いたのは、煙草を咥えるときだけだった。
歴史的ストライカーの穴は簡単には埋まらない。
クラブは、すぐさまエースの後釜探しに着手した。リストに挙がったのは、FWイカルディ(インテル)とFWカリニッチ(フィオレンティーナ)だ。
イカルディの代理人である姉さん女房ワンダ・ナラとの交渉を経て、一昨季の得点王へのオファー額は7000万ユーロにまで引き上げられたが、チャイナ・マネーの後ろ盾を得たインテルは、エース兼主将であるイカルディの放出に応じず。カリニッチにしても、欧州カップ戦出場権を争う直接ライバルのフィオレンティーナが、お値打ち価格で放出を容認する望みは薄い。
リーグのシーズン最多得点記録を66年ぶりに塗り替えた歴史的ストライカーの抜けた穴が、おいそれと埋まるはずがないのだ。