リオ五輪PRESSBACK NUMBER
スラム、強盗、渋滞、不衛生……。
五輪開幕直前、溢れるリオの不道徳。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJMPA
posted2016/08/05 16:00
選手村の外側を警備する兵士たち。治安部隊そのものが殺人などの犯罪を犯しているというニュースも報道されているが……。
北京より、ソチより、警官や兵士の姿が少ない。
治安面の問題が取沙汰された割には、見た目には警備はそれほど厳重ではない。
警官や兵士の姿も、ロンドンやソチと比べれば明らかに少ない。
空港で銃をかまえた兵士が何人も警備している光景がテレビで伝えられたが、選手が到着するとき以外は、常にそんな警戒態勢がしかれているわけではない。
他にも、大会の施設内に入るときに通過するセキュリティゲートで、「持ち込み禁止」とされているはずのものがスルーされて持ち込めているケースもある。報じられてきた事件の数々からすれば、保安体制は思いがけないほど緩いのだ。
大会の予算がかなり切羽詰っていることも、随所にうかがわせる。
細かなことで言えば、プレス向けに大会のガイドなどがセットとなったキットが挙げられる。必要なものが入っていれば十分だと個人的には思うが、事実として、同梱されるグッズ類は近年の大会と比べて、思い切り質素になった。
プレスセンターではコーヒーを無料で提供しているが、使用する紙コップは使い捨てにせず、回収できたものは洗って再利用しているように見受けられる。
スラムは通常の街中にも延々と広がっている。
「能力を超えてやろうとしているんです」
あるボランティアスタッフが語っていた言葉が頭をよぎる。移動するバスから目にした光景を思う。
山の中腹に広がる大規模なスラム「ファベーラ」は広く知られている。だが、中腹部ばかりではない。バスから見える一般的な大通り沿いの町並みにも、ファベーラと変わらぬ様相が広がる地区がいくつもあるのだ。
一方で、真新しい高層マンションが立ち並ぶエリアもある。場所によっては、道路一本でその両者は隔てられている。
それでも明日、大会は開会式を迎える。
別のボランティアスタッフは、笑う。
「楽しみですね~。いよいよですね~」