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全校が出揃う7日目までの注目選手!
第一印象は「好投手が揃った」大会。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/08/06 11:00
49校の代表が、1校の勝者と48校の敗者に分かれる甲子園。今年も、夏がやってくる。
花咲徳栄の高橋は、球も速いがコントロールが凄い。
高橋は埼玉大会6試合(37イニング)を投げて与四死球が2でわかるようにコントロールが緻密。9回投げていくつ四死球を与えたかを示す与四死球率は0.49。何と1を切っているのだ。ストレートも最速152kmと速いがそれが突出していない。表現が大げさになりそうで怖いが、速いストレートと縦割れの変化球が、捕手が構えたミットに寸分も狂わず吸い込まれるという印象なのだ。
与四死球率3.10の寺島は、高橋ほどコントロールが安定していないが、昨年夏から評価が高く安定感が際立っている。スライダー、フォークボールの精度が高く、ストレートはちょっと力を入れると140キロ台中盤を計測するという迫力(最速は149km)。投球フォームの安定感や体格のスケールがあり、甲子園初登場というのもファンの興味をそそる。
右腕でストレートが速いのは高田の154km。これは出場選手中ナンバーワンを誇る。松坂大輔(ソフトバンク)の横浜高校時代の投球フォームを映像で見て徹底的に真似したというが、その結果ストレートの速さだけでなく、松坂が得意とした斜めに鋭く変化するスライダーも手に入れた。コントロールも安定していて、与四死球率1.89はプロに当てはめると現在の涌井秀章(ロッテ)の1.97を上回っている。
初戦で、この10人はぶつからずに散っている。
寺島と同様、甲子園初登場で話題になりそうなのが藤平だ。中学時代からリトルシニアの全国大会で活躍し、今風に言えば「スーパー中学生」として知られていた。縦横2種類のスライダーにフォークボールのキレが素晴らしく、ストレートは最速153kmと速い。神奈川大会で記録した奪三振率11.91は見事の一言である。
初戦の組合せを見ると、ここまでに名前を挙げた10人が初戦でぶつからず、うまい具合に散っている。
村上を擁して春夏連覇を狙う智弁学園は初日の第2試合で出雲と、寺島と山口裕次郎のW左腕で頂点を狙う履正社は2日目の第3試合で高川学園とあたる。その直後に藤嶋の東邦が北陸と対戦し、3日目の第3試合には藤平と左腕・石川達也のWエースで松坂以来18年ぶりの夏制覇を狙う横浜が東北と激突し、その直後に鈴木の常総学院が本格派右腕・京山将弥を擁する近江と対戦する。