バレーボールPRESSBACK NUMBER
栗原恵は今もコートに立っている。
変わらぬ可憐な笑顔と、新たな役割。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO
posted2016/07/30 07:00
今年1月、栗原恵は通算230試合出場を果たし、Vリーグ栄誉賞の資格を得た。
移籍を考えた栗原を、チームメイトが引きとめた。
今シーズンに向けては移籍も考えたが、日立のチームメイトやスタッフに強く引き止められ、残留を決めた。
「チームメイトに『もうちょっと一緒にやりましょう』というふうに言ってもらったのが大きかったですね。それに、若い選手を使っていくのが当たり前という流れの中で、年齢がいっている自分が引き止めてもらえるのはありがたいことですから」
また、このチームにまだ自分ができることがあるという思いもあった。その1つが、高さと速さを兼ね備えた攻撃を実現することだ。
自分の高さを活かす方法を、周りとともに作る。
栗原は高校卒業後、NEC、パイオニア、ロシアのディナモ・カザン、岡山、日立と多くのチームを渡り歩いてきたが、言葉の端々にパイオニア時代のアリー・セリンジャー監督から受けた影響の大きさを感じさせる。
「自分は高さがあるので、身長の違う他の選手と同じかたちの速いバレーを求めてはいけないと思っています。若い頃、セリンジャーさんにずっと『高いところで速いバレーをしなさい』、『高さとパワーがスピードにつながるんだ』、『高いところから出してもらったトスを、高い打点で打つのが一番速いんだ』というふうに教えられてきましたが、その考えが今になってわかる。
当時はもう周りの人たちがそういう環境を作ってくれていて、私は上がってきたトスを打たされていたというか、打たせてもらっていただけ。でも今は、あえて自分がそれを求めてやっていかなきゃいけない。自分の良さをいかすためにも、そこは努力していきたいと思います」
今季は自身のコンディションを整えベストなプレーをするだけでなく、これまでに得た成功体験をチームや若手に伝えていくという新たな境地に進もうとしている。