バレーボールPRESSBACK NUMBER
栗原恵は今もコートに立っている。
変わらぬ可憐な笑顔と、新たな役割。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO
posted2016/07/30 07:00
今年1月、栗原恵は通算230試合出場を果たし、Vリーグ栄誉賞の資格を得た。
控えではあるが、動きは「全盛期に近い」。
しかし、日立に移籍して迎えた昨シーズンのV・プレミアリーグでは、ふくらはぎの肉離れから復帰すると、リーグ終盤に調子を上げた。控えの立場ではあったが、ファイナル6のトヨタ車体戦では途中出場で劣勢の流れを変えるなど、日立の初の決勝進出に一役買った。
ブロックの上から打ったり、インナーのコースに力強いスパイクを打ち込むなど、他の選手には真似できないプレーを披露し、松田明彦監督は「全盛期に近い働きをしてくれた」と讃えた。
「今まで怪我をしたりいろいろありましたが、今は状態としてはすごくよくて、痛みを感じることなく毎日プレーできています」と栗原は充実感を漂わせていた。
ただ、久光製薬との決勝はセットカウント1-3で敗れ、栗原の出番は相手がマッチポイントを握ったあとのワンポイントだけだった。
試合後、栗原は静かに涙を流した。チームが敗れた悔しさと、いい状態で準備してきたにもかかわらず出場機会が訪れなかった悔しさ。それは「出れば、何かやれたはず」という自信の裏返しでもあった。
昔を知る監督は「メグ、いい状態で打ててるな」と。
その手応えと悔しさを、4~5月の黒鷲旗にぶつけた。チームはベスト8で敗退したが、栗原は好調を維持。予選ラウンドで対戦した下北沢成徳高の小川良樹監督は、「久しぶりに彼女のあんなにいい打球を見た」と興奮気味に語った。
かつて、栗原のいた三田尻女子高(現・誠英高)と、大山加奈や荒木絵里香を擁した成徳学園高(現・下北沢成徳高)は名勝負を繰り広げた好敵手だっただけに、小川監督は「あーメグ、いい状態で打ててるなー、よかったー! とすごく嬉しかったですね」と自分の教え子のように喜んだ。
輝きを取り戻し、31歳の今が第2のバレー人生のスタートだと言わんばかりの溌剌としたプレーだった。