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オリ佐藤世那の理想は“汚い”直球?
思い出の地・舞洲を巣立つために。 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2016/07/09 11:00

オリ佐藤世那の理想は“汚い”直球?思い出の地・舞洲を巣立つために。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

昨夏甲子園で準優勝投手となった佐藤世那は、二軍の地で緩急を身につけようとしている。

「1個タイミングをずらせる球種があるだけで……」

「今日はカーブでストライクや空振りを取れた。カーブがあったから、まっすぐを見逃してくれたり、ちょっとボール気味でも手を出してくれたんだと思う。この世界ではまっすぐ、フォーク、スライダーだけでは無理だけど、1個タイミングをずらせる球種があるだけでだいぶ楽になるとわかりました。今日は投げていてすごく安心できました。フォアボールがなかったのが一番よかった。しっかりゾーンで勝負できていました」

 試合後の佐藤は、少し自信を取り戻した明るい表情で語った。

「今は以前より肘が上がって縦振りの腕の振りになっているので、カーブが前よりもキレイに抜けてくれるから、ちょっといい感じになっているのかなと思います」と新しい武器について自己分析する。

 捕手の伊藤もこう言って期待を寄せる。

「世那はしっかり腕を振って投げようという意識がある。バッターって、腕を振るピッチャーが嫌なんです。世那はまっすぐか変化球か、見分けがつかないような腕の振りをしていて、投げっぷりはすごくいいと思います」

U-18W杯で好投した舞洲が来年以降の拠点に。

 もう一つ、大阪湾に浮かぶ舞洲という場所も、佐藤を後押ししたのかもしれない。

 舞洲ベースボールスタジアムは、昨年8月から9月にかけて行われたU-18ワールドカップで、アメリカを完封し、カナダ戦でも13三振を奪って完投勝利を挙げるなど、佐藤にとって相性のいい球場だ。今年6月17日の登板前も、「舞洲はいい思い出しかない」と語っていた。

 その次の登板、7月1日の阪神戦も同じ舞洲での試合だったのだが、この時は3回に3失点したものの、その裏、すぐに味方が5点を返し、勝利投手となった。縁起の良さは続いている。

 オリックスは現在神戸市にある選手寮やファームの本拠地を、来年、舞洲に移転する。本拠地は舞洲ベースボールスタジアムの隣に建設中の新球場だが、縁起のいい場所に腰を落ち着けて野球ができることは佐藤の力になりそうだ。

 スタッフも、「ここのマウンドを隣の新球場に持っていくか?」と冗談をとばす。

 しかし願わくば、佐藤世那には舞洲に根をはることなく一日も早く巣立って、一軍のマウンドで輝いてほしい。
 

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