猛牛のささやきBACK NUMBER
オリ佐藤世那の理想は“汚い”直球?
思い出の地・舞洲を巣立つために。
posted2016/07/09 11:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
NIKKAN SPORTS
本格的な暑さの到来とともに、昨夏の甲子園を沸かせた右腕に躍動感が増してきた。
昨年の夏、エースとして仙台育英高を26年ぶりの決勝に導き、東北勢悲願の初優勝まであと一歩に迫った豪腕・佐藤世那だ。
その後、ドラフト6位でオリックスに入団。春季キャンプで右ふくらはぎの肉離れを発症し出遅れていたが、4月中旬から二軍で実戦登板を重ね、初先発した6月1日のソフトバンク戦でウエスタン・リーグ初勝利を挙げた。
ただ、表情は晴れなかった。理想のストレートを投げられていないというのが原因だった。
「球がもっと汚くなってほしいんですよね」
そう言ってため息をついた。
「今はキレイな回転になっちゃったんです」
「高校の頃はもっと汚いボールというか、汚い回転で、シュートしたりしていた。でも今はキレイな回転になっちゃったんです。軌道もまっすぐになった。だからタイミングが合いやすいんだと思う。自分的には前のもっと荒れていたボールの方がよかったなと感じています」
回転が変わった原因の一つは体重の変化だと佐藤はとらえていた。昨夏は86kgで、そのあたりがベスト体重なのだが、今年1月に入寮した時は89kgに増えていたため、絞ろうとしたところ体重が落ちすぎて、82kgにまで減ってしまった。
「ボールに力が伝わっていない感じがします。前は『バーン!』だったのが、今は『ピュッ』という感じで、打者からしたら怖さがないと思う。普通の、何の特徴もないピッチャーになってしまっていると思うんです」