“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-16代表が目指す“長友佑都イズム”。
小さくても世界と戦う方法を考える。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/07/04 07:00
久保建英にもライバル心を燃やす中村敬斗。プリンスリーグ関東で三菱養和のFWとして活躍し、すでに結果も十分出している。
この大会で、一気に成長した姿を見せた中村敬斗。
今大会、誰もが満足の行く結果は残せなかった。だが、可能性を大きく広げようとしている選手は多くいた。
三菱養和SCユースに所属するFW中村敬斗は、シュートに対する意識、そしてシュートの質が格段に上がった。初戦のハンガリー戦、2トップの一角としてスタメン出場した彼は、左からのカットインで何度もゴールに迫った。
「シュートはかなり練習をしていて、自分の武器だと思っています。どんな状況でも、シュートを常に狙っていて、まずシュートを狙ってから、それがダメならスルーパスやドリブルの仕掛けだ、と思っています」
プレーのプライオリティーの1番にシュートを置き、積極的に仕掛け、強引に行くこともあれば、すぐに判断を切り替えてラストパスを出すことも出来る。
ハンガリー戦でFW棚橋尭士(横浜FMユース)が決めた先制弾も、中村が左でボールを持ち、ドリブルでカットインしたところから始まった。
「インステップで強いシュートを打つイメージがあったけど、相手にちょっと引っかかってしまったので、パスに切り替えようと思った。バックパスよりも無理矢理でも前に出した方が良いと思って、良いポジションにいた(棚橋)尭士に出しました」
さらに19分には、再び左サイドでボールを受けると、対峙した2枚のDFに対し、「ちょっとずらしてから、逆サイドに巻いて狙おうと思った」と語る突破を見せ、見事ファインゴールへと結びつけている。
「中村が物凄いシュートを打てるようになって……それによって、彼がどれだけ努力をしているかが分かるんですよ」と森山監督も目を細めていた。
ただガムシャラにゴールを狙う選手もいる。
3試合で4ゴールと得点王に輝いた棚橋もまた、森山監督の教えを体現するひとりだ。
所属する横浜FMユースではベンチにも入れず、すでに出場機会を得ている周りの選手と比べると出遅れているようにも見える。だが、彼には『ゴールへの強烈な欲求』という武器がある。「ピッチに立ったら、何が何でも点を取る。それが自分の持ち味だし、大事な部分だと思っています」と、彼はゴールに飢えれば飢えるほど、研ぎ澄まされた感覚をピッチ上で一気に解放する。
「チャンスを掴まないと、次は無いと思っています。ゴールにこだわりました」と、どこまでも貪欲にゴールを目指す姿勢で、自分の存在感をしっかりと示してみせた。