セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
スペインの時代にイタリアが終止符。
EUROでまたも理性を超える結果が。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/06/29 11:30
4年前、EURO決勝でスペインに0-4で敗れ「試合にすらならなかった」とブッフォンは完敗を認めていた。
ユーベ勢すら、自分たちを「雑草のチーム」と呼ぶ。
今大会、イタリアの選手たちは優勝候補と目されない自分たちを「雑草のチーム」と称している。代表の中心を占める、国内敵なしのユベントス組であってもそうだ。
決して自虐ではない。スター選手はいなくとも、勝利へ一丸となるプレースタイルへの誇りを込めて、彼らは自らをそう呼ぶ。
先制し“1-0(ウノ・ア・ゼロ)”の形に持ち込んだイタリアは、少しずつ理詰めのプレーで王者を罠にはめていった。
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FWペッレとFWエデルの2トップは、スペインのDFたちを巧妙に引きずり回し、ビルドアップに参加させない。
天才MFイニエスタは3人で囲むのがセオリーだ。いぶし銀の潰し屋デロッシが、反則にならない程度に身体をぶつけ続けて、32歳のイニエスタの体力を削った。仮に天才がパスを通しても、受け手の選手からファウルをもらえばいい。
どうすればスペインのプレーを“切る”ことができるのか。それを実践することができるのか。
選手が「偏執狂」と怖れる戦術マニアのコンテ。
選手たちが「偏執狂」と怖れるほど戦術マニアの一面を持つ指揮官コンテは、理詰めでスペインを封じ込めにかかった。闘将の「理性を超えろ」という言葉には、まず理詰めの守備を完徹してから、という前提条件がある。
アズーリは前半の間、先制点以外に少なくとも5度の得点機を作り、完全にゲームの主導権を握った。
ただし、スペインも手をこまねいていたわけではない。守護神デヘアの好セーブ連発に勇気づけられ守備ラインを上げると、無敵艦隊は49分のCKから反撃に転じた。
60分にはFWモラタが遠めの位置からループシュートを狙い、70分にはFWバスケスを入れ、それまでの3トップから彼らの原点ともいえる4-2-3-1へスイッチした。
76分には、MFイニエスタの左足ボレーが、イタリアの守護神ブッフォンを襲った。