セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
スペインの時代にイタリアが終止符。
EUROでまたも理性を超える結果が。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/06/29 11:30
4年前、EURO決勝でスペインに0-4で敗れ「試合にすらならなかった」とブッフォンは完敗を認めていた。
8年間、スペインはずっとイタリアの天敵だった。
この8年来、スペインはずっとイタリアの天敵だった。
DFジョルジョ・キエッリーニは、8年前のウィーンの夜のことをよく覚えている。
EURO2008は、アズーリの一員として初めて出場したメジャー大会だった。ウィーンでの決勝トーナメント1回戦でスペインを完封した彼は、0-0の末のPK戦に敗れて大会を去る不条理を味わった。
勢いにのったスペインが戴冠し真の強豪国へ生まれ変わると、以来、事ある毎にイタリアの前に立ちはだかった。靴の中に紛れ込んだ小石のように、心穏やかには対峙できない相手になった。
4年前の屈辱的大敗の後、リベンジをかけた3年前のコンフェデレーションズ杯でまたしてもPK負けを喫し、返り討ちに遭った。それでも、未来永劫スペインに勝てない、とは思わなかった。
どんなに打ちのめされても、キエッリーニはひたすら守備のロジックを突き詰めようとした。
イニエスタは天才でも、フアンフランは違う。
65分にMFイニエスタがボールを持ったときも慌てなかった。キエッリーニは、8年間研鑽した成果を披露した。
イニエスタは天才だが、右サイドで受けるDFファンフランはちがう。キエッリーニはDFフアンフランとの距離をすっと詰める。パスのコースを塞ぎ、相手の選択肢を狭め、味方の数的有利を揃える時間を稼いで、ボールホルダーの攻め手を奪う。
DFフアンフランはMFイニエスタに戻して、再び1からプレーを始めようとする。コンマ数秒の間に中央へ動いたキエッリーニは、イニエスタの次のパスコースを読んでボールを奪った。
このシーンこそ、コンテの求める守備の理性の極致であったはずだ。