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3戦0封で突破もドイツ本命説に異論!?
20年ぶりのEURO制覇を阻むものとは。
text by
遠藤孝輔Kosuke Endo
photograph byGetty Images
posted2016/06/26 08:00
次世代のドイツ代表を牽引する存在と評価されているキミッヒ。所属するバイエルンでは本職のボランチからコンバートされたCBでのプレーが多い。
堅守は光るが攻撃面の詰めの甘さは不安材料。
個々の上質なパフォーマンスが際立った守備とは対照的に、組織としての機能性がまずまずだった攻撃は、詰めの甘さが大きな問題として浮上した。
3試合でのシュート総数は24カ国中3位タイの59本。枠内シュート数は同2位タイの21本に及んだ。だが、ネットを揺らしたのはわずかに3回。
1~2戦目で“偽のセンターフォワード”、3戦目で左ウイングを務めたゲッツェはフィニッシャーとしての力不足が否めず、予選9得点のミュラーは持ち前の決定力が影を潜めている。エジルは相変わらずエリア内でのシュートという積年の課題をクリアできていない。
ベテランの奮闘とラッキーボーイの躍動。
破壊力不足のその前線で救世主となりそうなのが、北アイルランド戦で初先発&ゴールを記録したゴメスだ。
2015-'16シーズンのトルコリーグで得点王に輝いた生粋のゴールハンターは、全盛期の凄みを完全に取り戻しつつある。CBと巧みに駆け引きを繰り返すだけでなく、確度の高いポストプレーで2列目の飛び出しを促し、フィニッシュ以外の局面でも異彩を放った。決勝トーナメント1回戦でも先発起用が濃厚なこのベテランが、優勝に向けた“陰のキーマン”となるかもしれない。
頂点に立つにはいわゆるラッキーボーイの出現も必要だろう。
その資格を有しているのが、北アイルランド戦でEUROデビューを飾った21歳のキミッヒだ。
レーブ監督から試合前日に本職のセントラルMFではなく、右サイドバックでの先発を告げられた俊英は、瞬く間に「時の人」になる。ボール回しを円滑にさせる繋ぎのパス、チャンスに直結するクロスを連発し、豊富な運動量で右サイドを活性化。ベッケンバウアーが「新たなラームになれる」と激賞すれば、マテウスが「頭の良さを見せつけたね」と褒めちぎる活躍を見せ、ドイツ代表のグループリーグにおける最大の発見となった。