炎の一筆入魂BACK NUMBER
広島快進撃の裏に、この人あり。
赤松真人は絶対に欠かせぬ“代走”。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/06/24 11:00
赤松真人は33歳、プロ14年目のベテラン。守備でも賞賛されてきたが、現在は代走のスペシャリストとしてチームに貢献する。
データ分析力をチームのためにも還元。
石井琢朗打撃コーチが守備走塁コーチを務めていた時代から、赤松はスコアラーから他球団の投手の映像をもらい研究を重ねるようになった。試合で実際に見て映像からの印象と照らし合わせ、先発出場の選手や担当コーチと意見を交わす。首脳陣と若手選手の間に入る橋渡し役も担っている。
「自分のためだけに、という考えはもう古い。自分が感じたことを伝え、その選手が実行に移せればチームのためになるし、その結果新しいものも見えてくるかもしれない」
自分のためだけではない。チームメートに還元してきた。持ち前のスピードに加え、データに基づいた分析力、洞察力が加わった赤松は相手にとって脅威だろう。
相手バッテリーへのプレッシャーもデータに基づく。
1点が試合を大きく左右する試合終盤。代走・赤松の登場は、相手バッテリーに大きなプレッシャーを与える。警戒網を掻い潜り次の塁を奪うだけではない。投手の背後で何度もスタートを切る仕草を繰り返すだけでじらすこともある。
それもまたデータによるもの。
「一塁に走者がいるとき、走られたくないと思う投手もいるけど、走るなら早く走ってくれと思う投手もいる。そういうときは走れても走らない方がいいときもある」
相手バッテリーへの重圧のかけ方はさまざま。否が応でも投手は赤松の動きが気になる。傍目には打者と投手の1対1に見える勝負も、実際には2対1。相手投手は打者とともに、走者赤松を警戒しながら勝負をしなければいけない。
ブラウン体制下では中堅のレギュラーを務め、'09年にはオールスター戦に出場し、賞も獲った。ゴールデングラブ賞受賞歴もある。レギュラークラスとしての輝かしい経歴も持ちながら、切り札としての生きる道を突き進んできた。