プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ルーニーは中盤でOK。ではFWは?
一見好調のイングランドの悩み所。
posted2016/06/19 11:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
AFLO
6月16日のウェールズ戦で逆転勝利を収め(2-1)、2試合で勝ち点4ポイントのグループB首位に浮上したイングランド。ギャレス・ベイルの先制FKを浴びて迎えたハーフタイムを境に投入されたジェイミー・バーディーとダニエル・スタリッジが、それぞれ同点と逆転のゴールを決めた。
EURO2016初戦でロシアと引分け(1-1)に終わっていたイングランドにすれば、実質的には勝たなければならない一戦だった。前半にグループステージ敗退の危険を漂わせたチームと、現契約が満了する今大会終了後の続投に赤信号が灯りかけたロイ・ホジソン代表監督は、揃って後半に希望を取り戻した。
自力で試合の流れを変えた格好のホジソンは、その采配を母国民に讃えられることになった。賞讃の声は、一介のファンのみならず、代表キャプテンのウェイン・ルーニーや、元代表エースで現在はメディアの「代表ご意見番」とも言うべきガリー・リネカーからも発せられている。
ケインとバーディーの2トップはルーニーの犠牲に。
後半頭からの2枚替えに加え、73分にはマーカス・ラッシュフォードも投入したイングランドは、MFとして先発したルーニーを含めればピッチ上にFWが4名。たしかに、「積極的」と評されるに相応しい交替策ではあった。
しかしながら、冷めた言い方をすれば指揮官の「勇断」などではなく、自らの「誤断」によって陥った窮地でひねりだした采配が、結果的に当たっただけ。そう言っても差し支えはないだろう。その判断ミスとは前線の人選だ。ホジソンは、前線のベストメンバーを決めかねたままEURO開幕を迎えてしまった。
開幕直前の親善試合3戦ではハリー・ケインとバーディーの2トップ採用に気持ちが傾いているかに思われたが、実際には4-3-3システムで開幕2戦に臨んでいる。最終テストマッチとなったポルトガル戦(1-0)で、中盤がダイアモンド型の4-4-2が不発に終わった影響もあるに違いない。
2トップを組んだケインとバーディーは、アウトサイドでの守備を重視した指揮官の指示と、時にトップ下ではなく1トップのようだったルーニーのポジショニングの犠牲となり、コンビとして呼吸が合わなかったというよりも、息を合わせる機会自体に恵まれなかった。それでも、指揮官は「不可欠な存在」と断言しているルーニーの適所探しを優先したようだ。