テニスPRESSBACK NUMBER
ロンジンが見通したテニスの未来――。
フューチャーテニスエース大会詳報。
~加藤智子が準決勝まで進む快挙!~
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byLONGINES
posted2016/06/03 16:00
慣れないクレーコート、言葉の壁というハンデをものともせず準決勝まで進出した加藤。
サンチェスが語った、クレーコートとアジア人選手。
多くのアジア選手が多かれ少なかれクレーに苦手意識を持っていることは否めない。
プロ選手からも「クレーコートではクレー育ちのヨーロッパの選手に所詮敵わない」とか「クレーのテニスに必要なテクニックを後付けすることはほとんど不可能」といった、あきらめの言葉を耳にすることもある。しかしこれについて、サンチェスもクライシュテルスも首を横に振った。
「そんなふうに思わない。考え方とプレーの仕方を少しだけ変えるのよ。大切なことの1つ目は忍耐。ハードコートと同じじゃないという覚悟を決めてしっかり心の準備をし、自信を持つの。プレーのレベルが上がれば、クレーコートでも成功する。ケイ・ニシコリがいい例でしょう。彼はクレーコート育ちじゃないのに、今ではクレーで完璧なプレーをしてるわ」
クレー本場のスペインで育ったサンチェスとは違うクライシュテルスも、「完全な誤解。もしも日本の若い選手がそういう苦手意識を持っているなら、言ってあげてほしい。ツアーの選手の80%は最初クレーが好きじゃないと言うはずよ。私も好きじゃない。問題は頭の切り替えと、スライディングなどの技術。それはクレーコートプレーヤーでなくても身につけることができる」とクレーが苦手という子供たちへのエールを送った。
今回のイベントの対象のような若い世代が本場のクレーコートに触れ、他国の同年代の選手たちと交流する機会を得ることは、その〈切り替え〉のために努力するモチベーションになるはずだ。
大会終了後、全員でローランギャロスへ観戦に。
表彰式のあと、参加者たちは付き添いの親やコーチも含めて全員でローランギャロスへ車で移動し、センターコートで観戦。
持ち堪えていた空が雨粒を落とし始め、グランドスラムの雰囲気は〈満喫〉するところまでいかなかったかもしれないが、そう失望することはない。彼らはきっと遠くない将来、またこのクレーの本場を訪れることになるだろうから。