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父ヨス・フェルスタッペンに捧ぐ――。
F1史上最年少優勝の息子と父の物語。 

text by

尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

PROFILE

photograph byHiroshi Kaneko

posted2016/05/22 10:40

父ヨス・フェルスタッペンに捧ぐ――。F1史上最年少優勝の息子と父の物語。<Number Web> photograph by Hiroshi Kaneko

息子マックスの写真は沢山出回っているので――あえて、息子が優勝したスペインGPでの父ヨス、44歳の写真。

表彰台を2回経験した後、徐々に消えていったヨス。

 J・フェルスタッペンのF1デビューは、予定されていたものではなかった。

 当時ベネトンにはシューマッハのほかに、JJ・レートというレギュラードライバーがいた。しかし、シーズン開幕前のテストでレートがクラッシュし、負傷。F1デビューは急きょ巡ってきた代役だった。

 ベネトンはタイトル争いをする強豪チームだった。レースをするには正しい場所だったが、デビュー1年目のドライバーがステアリングを握るには荷が重かった。

 しかも、テストも満足に行えないままのデビュー。開幕2戦ともリタイアに終わったJ・フェルスタッペンは、3戦目にはケガが回復したレートにシートを明け渡すしかなかった。

 表彰台を2回経験して迎えた2年目以降、今度は正しい場所になかなかたどり着くことができなかった。

 そのJ・フェルスタッペンが息子のデビューチームとして選択したのが、トロ・ロッソだった。

息子マックスに訪れた、突然のチーム変更。

 トロ・ロッソはJ・フェルスタッペンがF1で最後に所属していたミナルディを前身にするチーム。ほとんどのメンバーは入れ替わったものの、まだ顔なじみもいる。17歳になったばかりの息子がデビューするチームとしては、ちょうどいい場所だった。

 ところが、2年目のシーズンを同じチームで送っていたM・フェルスタッペンに予定外の事態が舞い込む。それはトロ・ロッソの兄弟チームであるレッドブルが、ダニール・クビアトに替えて、M・フェルスタッペンを起用すると、スペインGP前に決定したからである。

 果たして、この決定はM・フェルスタッペンにとって正しいタイミングとなるのか?

 周囲には、突然の移籍を不安視する者もいたが、それは杞憂に終わった。

【次ページ】 この勝利は息子のものであると同時に父のものである。

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