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前人未到の記録まであとGPで9勝。
ロッシが20年も勝ち続けられる理由。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2016/05/07 09:00
スペイン・ヘレスサーキットでの勝利は2009年以来7年ぶり。ゴール時にはウィリーを見せるほどの余裕も。
アゴスチーニの122勝という偉業まであと「9」。
以来、タイトル獲得はないが、ドゥカティに移籍した'11年、'12年をのぞき、毎年、ランキング上位に名前を連ね、優勝してきた。今回のスペインGPの優勝で通算113勝(うち最高峰クラス87勝で記録更新中)を挙げて、通算213回の表彰台に立ってきた。表彰台に立つ確率は約64%。長く続けているだけでなく、常にトップランカーとして活躍してきたことを物語る数字である。
いずれにしても、もう誰も破れないと言われてきたジャコモ・アゴスチーニの122勝という偉業にあと「9」に迫った。ヤマハとの契約は2018年まであり、世紀の大記録更新の期待が寄せられている。
昨年は、若き王者マルケスをシーズン終盤のマレーシアGPで転倒させて世界的なニュースになった。その事件が影響して、最終戦までもつれ込んだロレンソとのチャンピオン争いに敗れ、以来、マルケス、ロレンソの2人との断絶状態は続いている。
チャンピオンにふさわしい3つの資質。
過去を振り返っても、ロッシがチャンピオン争いをしたライダーで不仲になった選手は多い。ビアッジ、ジベルナウ、ストーナー、そしてロレンソとマルケス……。イタリア人特有とも言える、対立の構図を作り、それをモチベーションにして戦っていくというスタイルは、昔もいまも変わらない。
それだけ負けず嫌いだということを証明しているし、チャンピオンになるための重要な資質である「ライディングのセンス」と「負けず嫌い」を兼ね備えた選手である。
もうひとつ名選手の条件として付け加えるなら、怪我をしないということがある。これまでのキャリアで怪我らしい怪我は、'10年のシーズン中にモトクロスで右肩を痛め、その年のイタリアGPで右足の頸骨と腓骨を骨折しただけ。この怪我でイタリアGPを含めて4レースを欠場したが、ロッシの長いキャリアを見ていると、「怪我をしないのも才能」という言葉を実感させてくれる。