スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
前田健太と衝撃的デビュー。
すでに球史に残る成績。目指すは?
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2016/04/30 15:00
入団前の不安説を一掃するかのように勝ち続けている前田健太。デビュー戦で本塁打も放ち、メジャーを驚かせ続けている。
1980年デビューのヴァレンズエラという怪物。
注目すべき新人投手は、このあとも何人か出現している。'52年のステュ・ミラー(カーディナルス)は、最初の4試合で36イニングスを投げ(1完封、3完投)、0.75の防御率を残した。'70年のウェイン・シンプソン(レッズ)は、4試合で31イニングスを投げ(2完封)、0.58の防御率だった。'73年のスティーヴ・ロジャース(エクスポズ)は、4試合で35イニングスを投げ(2完封、1完投)0.77の防御率だった。
と並べてくると、だれしも首をひねるのは、フェルナンド・ヴァレンズエラ(ドジャース)の名前がここに入っていないことだろう。実をいうとヴァレンズエラは、'81年春に旋風を巻き起こす前、つまり'80年の9月から救援で10試合に登板し、17回3分の2を自責点0で抑えていたのだ。
ただ、この投球回数ならば、翌年も新人の資格は残る。というわけで、'81年のヴァレンズエラは、4月9日の先発デビュー戦から8試合で8勝0敗の怪物ぶりを見せつけたのだった。その軌跡はフェリスを彷彿させる。数字を並べてみよう。
4. 9 2-0完封(対アストロズ)
4.14 7-1完投勝利(対ジャイアンツ)
4.18 2-0完封(対パドレス)
4.22 1-0完封(対アストロズ)
4.27 5-0完封(対ジャイアンツ)
5. 3 6-1 9回まで登板(対エクスポズ)
5. 8 1-0完封(対メッツ)
5.14 3-2完投(対エクスポズ)
5月3日の試合は、9回裏まで1-1の同点で推移し、10回表にドジャースが5点を奪って勝利している。従って、9回裏まで投げたヴァレンズエラが勝利投手になった。
それにしても驚異的な数字だ。8試合で72イニングスを投げて防御率が0.50。先発デビューの4試合では、36イニングスで防御率が0.25。開いた口がふさがらないとは、このことをいうのではないか。