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前田健太と衝撃的デビュー。
すでに球史に残る成績。目指すは?
posted2016/04/30 15:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
前田健太がデビューから4戦連続で好投した。4月26日現在、25回3分の1を投げて自責点1。防御率0.36はナ・リーグのトップだ。ま、シーズンは8分の7も残っているから、あまりせっかちな口は叩きたくないのだが、眼を奪う好成績であることはまちがいない。1913年以降のデータで見ると、初先発から4戦連続クォリティ・スタート(QS=6回以上を投げて自責点3以下)の好発進を見せた新人投手は76人しかいない。そのなかで合計自責点1は前田ただひとりだから、メディアが騒ぐのは無理からぬことだ。
ただ、球史を振り返ってみると、超絶的な数字はいくつか発見できる。衝撃的なデビューを飾った新人は、前田のほかにもいる。
デビューから4完封3完投で7連勝した投手も。
最も有名なのは、1945年のデイヴ・フェリス(レッドソックス)だろう。
第二次世界大戦終結の年で、野球選手の質も量もそろわなかったという割引材料こそあるものの、フェリスはデビュー戦から7戦連続で勝利投手になった。笑ってしまいそうな成績を列記してみようか。
4.29 2-0完封(対アスレティックス)
5. 6 5-0完封(対ヤンキース)
5.13 8-2完投勝利(対タイガース)
5.18 2-0完封(対ホワイトソックス)
5.23 4-1完投勝利(対ブラウンズ)
5.27 7-0完封(対ホワイトソックス)
5.31 6-2完投勝利(対インディアンス)
このあとがどうだったかを知りたい方は、baseball-reference.com で、フェリスのゲームログという項目を検索していただきたい。結局'45年、彼は35試合に登板(31先発)して264回3分の2を投げ(リーグ2位)、21勝10敗、防御率2.96の立派な成績を残した。投手の分業制が確立されていないあの時代とはいえ、26完投(リーグ2位)、5完封(リーグ2位)という数字も凄い。リーグ1位はすべて、当時絶頂期だったハル・ニューハウザー。この年、投手三冠を達成したタイガースのエースに立ちはだかられてはなす術もないが、フェリスの快投は特筆ものだった。新人王(47年に創設)の制度があったら、当然受賞していたはずだ。