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清武弘嗣に1年間で起こったこと。
10番、怪我、そして――降格。
posted2016/04/30 08:30
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Getty Images
美談でもない。単なる悲劇でもない。ただ、この1年で清武弘嗣の回りで起こったことは記録しておかないといけない。
4月24日に17位のフランクフルトがマインツを下したため、最下位の18位に沈むハノーファーは14年間戦い続けてきた1部から降格することになった。
ドイツに来て4シーズン目、ハノーファーに来てから2シーズン目で、清武は2度目の降格を味わった。
もちろん、ハノーファーにやってきたことに後悔はない。
「この2年間、中心でやれたということは、大きかったですね。海外では、なかなかないことですから。みんなが『キヨ』、『キヨ』と言ってくれる。チームを勝たせないとダメだ、という責任感も大きかったですけど、それはプレッシャーではなく、やりがいを感じられるものだったんですよ」
しかし、降格したことに後悔や責任を感じないはずがない。
「悔いはありますよ。やっぱり、1部に残せなかったから。ホント、難しいシーズンだった。この1年間、良いことも辛いこともあったし、悲しいこともすごいあった。そういう意味で、自分にとってキツイ1年間でした。でも、まだ3試合あるから。そこで頑張っていかないとと思ってます」
言われなくても、10番を背負うつもりだった。
ニュルンベルクからハノーファーへと移籍したばかりの昨シーズンの最終盤、清武は監督に直談判した。MFのなかでゴールに最も近い、トップ下でプレーさせて欲しい、と。自らのゴールでチームに貢献したかったからだ。
そして、残留争いのライバルだったフライブルクとの直接対決となった最終戦ではヘディングシュートで先制点を決め、チームの残留に貢献した。
その試合を最後にハノーファーを去ることになっていた、当時の10番のシュティンドルからは「次の10番はオマエだな」と声をかけられた。もちろん、わざわざ言われなくても、そのつもりだった。今シーズンが始まる前にクラブに10番をつけさせて欲しいと願い出て、この番号は清武の背中に託された。それはチームを自らが引っ張っていくという決意表明でもあった。