8年分が込められた泳ぎ。

　揺れ動きつつ進む中、気持ちを固めることになったのは昨年の世界選手権だった。200mで6位に終わり、「これで最後にしたくない」とリオデジャネイロ五輪を明確に視野におさめた。勝負から逃げているとも受け取られていた勝利への欲求の低さも見つめなおし、勝負へのこだわりも芽生えた。トレーニングでも自らの意志をはっきり示すようになるなど変化が現れた。それらが結果となって示されたのが、日本選手権だった。

「オリンピックで世界新を狙いたいです」

　笑顔で抱負を語る。

　歩みを考えれば、金藤の場合、8年分が込められた泳ぎでもある。オリンピック選考会である日本選手権の重さ、日本選手権にたどり着くまでの過程の厳しさがそこにあったし、笑顔と涙は今大会の意味を象徴しているようでもあった。

アグレッシブな姿勢を貫いて飛躍した池江。

　重圧にどう挑むか。

　その点では、五輪代表選考に初めて臨んだ池江璃花子もまた印象的だった。

　今大会、競技開始順に、100mバタフライ、200m・100m・50m自由形と4種目、初日から最終日までフルに泳いだ池江は、初日のバタフライ準決勝で日本新記録をマーク。決勝でも派遣標準記録を突破して優勝、内定を勝ち取った。

　ゴール後から涙の止まらなかった池江は、テレビインタビューでも言葉にならないほど涙を流した。かかっていた重圧の大きさをうかがわせたが、今大会の池江は、どの種目でも日本新記録を目標に掲げて臨んでいた。

　高い目標を口にすることで自らプレッシャーをかけつつ、バタフライをはじめ、4×100m・4×200mフリーリレー、メドレーリレーと4種目の代表を手に入れたのだ。また、バタフライ出場は、200m自由形と重なることもあって、出ないことも検討していた。それでも本人の決断で出場しての内定である。アグレッシブな姿勢を貫いてこその飛躍に、池江の強さと可能性がうかがえた。

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