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自由形短距離に現れた2人の希望。
中村克、塩浦慎理の日本記録コンビ。
posted2016/04/11 14:00
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph by
AFLO
“日本新記録おめでとう”。
電光掲示板に映し出された文字が輝いた。
100m男子自由形決勝レース。400mリレーの選考も兼ねたレースで、会場を大歓声が包んだ。中村克選手、塩浦慎理選手、小長谷研二選手、古賀淳也選手のリオ五輪出場が決定した。
1位 中村克 48秒25
2位 塩浦慎理 48秒35
この2人がリレーの派遣標準タイムを切るためには、自らレースを引っ張ってペースを上げなければならないことはレース前から分かっていた。2位の塩浦も48秒41というそれまでの日本記録を上回る、レベルの高いレースだった。
レース前、中村選手を指導する奥野景介コーチも「克と慎理が個人の派遣(標準タイム)も切るくらいじゃないとだめだ」と話していた。塩浦選手の高橋雄介コーチも、同じようなことを言っていた。
そして「でも、あの2人ならやってくれるでしょう」とも。
短距離の自由形は、体格が物を言う世界。
短距離の自由形で世界と戦うことが、いかに難しいか。それは日本水泳界が抱えてきた課題だ。
2001年に福岡で行なわれた世界選手権で、山野井智広さんが50m自由形で銅メダルを獲得して以来、男子での個人のメダルはない。
私も現役時代に100m自由形を泳いだ経験があるが、世界で戦うためには、日本と他国の選手ではまず体格差が著しい。距離が短くなればなるほど、その差はタイムに顕著に反映される。
私の身長は174cmだが、世界では女子選手でも175cm以上は当たり前。決勝に進出したら180cm以上の選手もざらにいるという状態だ。
男子の50m(20秒91)、100m(46秒91)世界記録を持っているブラジル代表のC.シエロフィーリョ選手は、身長195cmだ。とはいえ彼も、自由形の男子トップ選手の中では決して珍しいサイズではない。
そして中村選手は185cm、塩浦選手は188cm。
彼ら2人を見た時、身長はもちろん、スケールの大きな自由形短距離の選手が出て来たなと感じたことを思い出す。