球道雑記BACK NUMBER
ロッテドラ1平沢大河、二軍で成長中。
強打者の系譜が見える打撃の才能。
posted2016/04/08 10:40
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
NIKKAN SPORTS
そのとき、一陣の風が吹いた。
千葉ロッテのルーキー・平沢大河の打った打球は、左中間に高く舞い上がり、風にも乗って、センター側やや左後方の防球ネットに突き刺さった。
4月3日に行われたイースタン・リーグ、千葉ロッテ対東北楽天戦。
左打席から逆方向へ、しかも外野の最深部に放った一発は、千葉ロッテファンだけでなく、東北楽天を応援するファンもどよめかせた。
「打った球は真っ直ぐだと思うんですけど、ベンチに帰ったら『ツーシームじゃないか?』『(ボール)遅かったよ』と言われて……。自分の中では真っ直ぐだと思うんですけど……」
イースタン・リーグとはいえプロ入り後、初の公式戦での一発を、試合後の平沢はやや照れくさそうに振り返った。
遠のいた“28年ぶり開幕スタメン”の快挙。
今から約2カ月前。平沢は沖縄県石垣島でキャンプを張る千葉ロッテの話題の中心にいた。連日、各種メディアが彼の一挙手一投足に注目し、それを追った。
「高卒新人内野手の28年ぶり開幕スタメン」
その歴史的瞬間の、その道程を、多くのメディアが伝えようと彼に密着し、キャンプ期間中の平沢の周囲にはメディア関係者が群がらない日がなかった。
しかし、キャンプが終わり、練習試合およびオープン戦と実戦を重ねていくと、課題が次々と浮き彫りになり、“28年ぶり開幕スタメン”の快挙は遠のいていった。
中でも一番の課題は守備だった。
3月8日のオープン戦(対北海道日本ハム戦)では、田中賢介が打ったショートへの強い打球をファンブル、さらに同試合では、陽岱鋼の三遊間よりのゴロをワンステップ多く踏んでから一塁へ送球し、これを内野安打にしてしまうなど、人工芝での守備、およびプロのスピードに戸惑うシーンが見られた。
試合後の伊東勤監督も「高校ではアウトになるんでしょうけど、あの辺もきちんとね。結果的に内野安打にはなりましたけど……」と苦言を呈した。