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工藤監督も思わず「速ぇー!」。
ホークスの先発5枠目は千賀滉大に。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/03/15 11:00
オープン戦では3日の阪神戦に先発し、4回を無失点。9日の巨人戦も5回無失点と好投した。
全盛期の藤川を彷彿とさせる「お化けフォーク」。
最速156キロのストレートは全盛期の藤川球児(タイガース)を思わせるような伸びがあり、「お化けフォーク」という武器もある。イーグルスの今江敏晃から「何度か対戦しましたけどあのフォークだけは……。しっかり見えていたはずのボールが、突然、目の前からふっと消えるんです」と聞いたことがある。だからお化けというわけだ。
とはいえ、ブレイクした当時は中継ぎだった。
プロ通算4勝。うち先発ではわずか2勝の実績しかない。
ホークスには松坂以外にも、中田賢一、大隣憲司、寺原隼人という経験も実績も豊富な先発投手がいる。確かに彼らは春季キャンプでのコンディション不良から調整が遅れてしまったが、多少無理をすれば開幕に間に合わせることができたはずだ。
それでも工藤監督は、迷わず千賀を抜擢した。
じつは千賀も今キャンプ中ずっと順調だったわけではない。まだ序盤の2月5日、ブルペンで投球練習を行った際に中指のマメを潰してしまい、しばらく投げ込みができない時期があった。
工藤監督も思わず「速ぇ」。
ともすれば調整不足などを理由に即B組降格となっても不思議ではなかった。しかし、工藤監督はそれまでの千賀のピッチング、そして練習姿勢を高く評価していた。
「特にキャンプ初日。今年は先発一本でやるんだという気持ちが伝わってきた。何日間か投げられなくても、ああいうのを見せてくれたら待ってあげられる」
確かに今年の千賀の仕上がりは抜群だ。そのキャンプ初日、工藤監督が千賀の球をキャッチャーの後ろから見て、思わず「速ぇー!」と呟いて大きな目を丸くした瞬間を見逃さなかった。
また、指が治った後のある日は、内川聖一が目慣らしのために打席に立った。内川もまた、肩をすくめて苦笑いした。
「150キロは出ていたでしょ」
その通り、スピードガンでは150キロを計測していた。だが、内川が驚いたのはそこではない。