プレミアリーグの時間BACK NUMBER
レスターは好感度最高の優勝候補?
他クラブのファンまで「異議なし」。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2016/02/11 11:00
困ったような顔がチャーミングなラニエリ。しかし、やはり彼はただの好々爺ではなかった!
支配されても勝つ、必殺のカウンター集団。
今季のレスターは4バックと2ボランチを後方の基本形とし、前線ではバーディーのスピードを中央で活用するなど、限りある戦力を最大限に生かすことに徹した指揮官によって、大雑把な攻撃集団から必殺のカウンター集団へと変身した。24節リバプール戦(2-0)では、敵にほとんどボールを支配されながら、相手監督のユルゲン・クロップが「拍手しそうになった」と認めた“ワンダー・ゴール”を含むバーディーの2得点で3ポイントを奪ってみせた。
敗れたリバプールのファンの中には、自軍がやはり予想外の優勝争いを演じた2年前を思い出して共感を覚えている者がいるかもしれない。“アンチ・ポゼッション”とも言えるが消極的ではない戦法でポイントを重ねるレスターには、「ポゼッションだけ」と言われるルイス・ファンハール体制に嫌気がさしたマンチェスター・ユナイテッドのファンも密かに肩入れしているかもしれない。いわゆる強豪ではないので、ライバル関係が地元の国内中部内に限定される上、監督を筆頭にチャーミングなハードワーカーたちが夢物語を演じているレスターは、最も人気の高い今季優勝候補だとも言える。
ライバルのファンも、レスター優勝に「異議なし」。
もしレスターが優勝を争っていなければ、中立的なサッカーファンの間では、育成ポリシーを貫いて12年ぶりのリーグ優勝を狙うアーセナルを支持する声が強かったと思われる。悲願のリーグ優勝という意味では、55年ぶりとなるトッテナムが圧倒的だ。2月1日にジョゼップ・グアルディオラの来季マンC監督就任が発表された時点では、威厳ある態度を取り続けるマヌエル・ペジェグリーニにリーグ優勝という退任の花道を望む声も上がった。だがその声も、レスターの勢いの前に1週間足らずでかき消された。
その翌々日、筆者はスタンフォード・ブリッジのスタンドにいた。マンU戦のキックオフ前に周囲の数名に聞いた限りでは、失意の今季を目の前でレスター戴冠を見て終えることになってもチェルシー・ファンは「異議なし」。頼りなくても憎めなかったラニエリ元監督が率いる敵対心の沸かないレスターであれば、ホームでの最終節で優勝を決められても許せるとのことだった。