プレミアリーグの時間BACK NUMBER
レスターは好感度最高の優勝候補?
他クラブのファンまで「異議なし」。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2016/02/11 11:00
困ったような顔がチャーミングなラニエリ。しかし、やはり彼はただの好々爺ではなかった!
11人合わせて移籍金37億円という格安クラブ。
まさかの優勝を支持する声は、もはや「レスター最愛の息子」が顔の番組に留まらない。「判官贔屓」が国民性の一部にあるイングランドでは、現実味を帯びたレスター優勝が全国レベルで望まれている状態だ。
異色のプレミア王者としては'95年優勝のブラックバーンが有名だが、クラブは当時のレベルでは資金力に恵まれている部類だった。例えばリーグ得点王となって攻撃をリードしたアラン・シアラーには、その3年前の獲得時に英国史上最高(当時)の移籍金が費やされている。
その点レスターは、時流に乗って外国人(タイ人)がオーナーとなってはいても、補強予算規模は「弱者」の部類。残留争い回避を目標に臨んだ今季は、岡崎慎司の獲得に要した700万ポンド(約13億円)が移籍金最高額だ。リーグ得点王を争うジェイミー・バーディーと年間最優秀選手の呼び声が高いマフレズは、2人合わせても140万ポンド(約2.3億円)程度。
勝つべくして勝ったマンC戦の先発イレブンを合計しても獲得費用は2200万ポンド強(約37億円)と、敵が昨夏にラヒーム・スターリング1人に支払った移籍金の半分でしかない。
監督のラニエリは、国内で好感度抜群。
しかも、そのシンデレラ・ストーリーの監督がクラウディオ・ラニエリときている。今季の解任候補筆頭から優勝監督へと化けつつあるイタリア人指揮官は、「迷監督」と呼ばれた前回プレミア時代から「好人物」としても認識されている。
開幕から上位を維持してもおごらず、今季初の無失点試合のご褒美としてチームにピザを振る舞い、安全圏到達を意味する40ポイントをシャンパンで祝うなど、復帰1年目のイングランドでは「全国民の心を和ませてくれた」とまで言われている。
もちろん、監督としての手腕も見直されている。噂ではオーナーに見捨てられた過去のあるチェルシーで、新監督候補としてラニエリの名前があがる事態などかつては考えられなかった。