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35歳の誕生日が9位スタートの最終日。
岩田寛、ゴルフ人生の「忘れえぬ日」。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2016/02/04 10:30
荒天で月曜日に持ち越された岩田寛の4日目。一桁順位の果実はほとんど手にしかけていたが……。
ポイントよりも大きな負担は、心の葛藤。
「今は1つでも多くフェデックスカップポイントを取りたい?」
岩田に、そう声をかけた。
「ポイントより……ここ何カ月あんまり良くなかったので、葛藤してます。でも我慢してやっています」
かつて、米ツアーに挑んでははね飛ばされ、「いつまでこんなことを」と自問自答した過去の日々と同じように、岩田は今再び葛藤している。
なんとかしなければ。そのためにはどうすればいいのか。岩田はその答えを見つけ出そうと懸命なのだ。
3日目を終えて9位、そして4日目の誕生日――。
今季8試合目のファーマーズインシュランス・オープン。予選を通過した岩田は3日目に9位へ急浮上。「ミスの範囲が狭くなった」と言った彼の頬から、一瞬だが笑みがこぼれた。それは、自問自答を終えるための光がわずかに差し込んだ瞬間だったのかもしれない。
翌日。35歳の誕生日の朝、バースデーボーイを待ち構えていたのは横殴りの雨と風。岩田は出だしの1番、2番、さらには5番でもボギーを喫し、12ホールで4つスコアを落とした。が、他選手の落とし方はもっと激しく、暫定9位に踏みとどまった岩田は、あの風雨の中でむしろ食い下がっていたといえる。
しかし、晴天ながらも強風に見舞われた月曜日は残り6ホールで4連続ボギーを喫し、通算2オーバーの80で18位に沈んだ。
「最悪でした……」
確かに、天候もコースコンディションもスコアカードに記した「80」という数字も最悪だった。が、岩田が口にした「最悪」は、きっとそういう数字のことではないだろう。
「最悪とは、何が最悪でした?」
そう尋ね返してみた。
「今の状態をなかなか抜け出せない。また元に戻る感じです」
ようやく好感触を感じながら好位置で最終日を迎え、探し続けてきた答えがようやく見つけられそうになったというのに、まだ見ぬ答えが風雨にさらわれてどこかへ消えてしまった。近づいては遠ざかる陽炎のごとし。そんなことを繰り返し、またしても振り出しへ、逆戻り。
岩田はそれが悔しくて悔しくて、それ以上語れぬまま車に乗り込むと、視線を落とした。