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“シード権地獄”で生き残れるのか?
石川遼の米ツアー、不振の背景。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2013/03/15 10:30
米国ツアーの大会でフロリダのコースを歩く石川遼。予選落ちや下位での苦しい戦いが続く中、光明を見出せるか。
およそ9センチ×5.5センチ、名刺大の青いプラスチック製のカード。乾いた笑顔の証明写真の横には、「Ryo Ishikawa」、そして「MEMBER」の文字。この一枚は小さいが、これこそが石川遼に加わった新しいID――アメリカPGAツアーのメンバーとしての証明書、ツアーカードである。
ツアーカードは広い意味で「シード権」を指し、ゴルフトーナメントにおいて年間の試合に優先的に出場できる権利のことをいう。サクセスストーリーを夢見る選手たちは、まずこのカードを求め、毎年世界各国から米国に集結する。日本ツアーを主戦場としてきた石川は昨年、PGAツアーへのスポット参戦を続けて18試合に出場。シード獲得対象となる賞金ランキング125位相当以上の額を稼ぎ出し、晴れてツアーメンバーとなった。
しかしながら日米の往復を繰り返し、必死の思いでつかんだ念願のこのカード。実際に手にしたとき石川の心境は「たいしたもんじゃないなぁ」といったところ。
感慨深いとか、気持ちが引き締まったとか、そんな言葉とは縁遠いものだった。
あっさりと石川遼の手元に届いた“ツアーカード”の重み。
昨シーズン末、シード権を新たに取得した選手は他にも大勢いる。
前年度の下部ツアー(ウェブドットコムツアー)での賞金ランキング25位までの選手、および年度末に行われるQスクール(予選会)における成績上位者25選手がその大多数だ。彼らにはそれぞれ、実際にカードが手渡されるセレモニーのような場が用意され、「卒業証書授与式」のように、巣立ちを祝福される。
だが石川がこの一枚と対面を果たしたのは1月、自身の初戦となった「ヒュマナチャレンジ クリントンファウンデーション」が行われたPGAウェストのクラブハウスの中。封筒に入れられ、ロッカーの中に、ぽつんと置かれていた。
とはいえプロ6年目にしてツアーの一員となった石川の、2013年の最低限の目標は、このカードをキープすることなのである。
優勝か? さもなくば、年間ランキングで125位以内を確保するか?
シード維持のためには、まずツアートーナメントで優勝することが一番の近道。
そしてそれぞれの大会の最終成績によって振り分けられるフェデックスカップポイントを積み重ね、8月のレギュラーシーズン終了時に125位以内に入ることだ(なお、この指標は獲得賞金ランキングにおける順位から今季、フェデックスカップポイントに移行された。過渡期である今年は、賞金ランク125位以内の成績を収めた選手もシード権を手にできる)。
一方、その125位以内に入れずとも200位以内であれば、ウェブドットコムツアーの賞金ランク上位75人の選手たちと総勢150人による4試合のツアーファイナル、いわば“入れ替え戦”に出場して残りのカードを争うことになる。しかし、大きな重圧を抱えながらプレーすることになるであろうこちらは、できる限り避けて通りたい。
まずは125位以内の確保が至上命令だ。