松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
「ああいう勝ち方もあるんだな」
松山英樹、我慢の仕方と開き直り。
posted2016/02/11 10:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
「開き直ったら強いって言うけど、あれは間違いない」
2015年暮れ、松山英樹は勝利から遠ざかった米ツアー2年目を振り返りながら、しみじみとそう言った。それは、言い換えるなら「開き直りきれなかったから勝てなかった」ということだったのだろう。
彼が言った「開き直る」とは、具体的にはどんな状況、どんな状態を指していたのか。
暦が2016年に変わり、再び始まった米ツアー転戦の日々。そのわずか2戦目のフェニックス・オープンで松山は早々にその答えを教えてくれた。「開き直る」とは、こういうことだったのだ、と。
最終日の終盤は、リッキー・ファウラーとの一騎打ちの様相。76ホールの死闘を制し、米ツアー2勝目を挙げた2月7日のサンデーアフタヌーンは、松山が開き直って勝利を掴み取った記念すべき日。
あの土壇場で開き直った松山英樹は、間違いなく、強かった。
1年目は4位、2年目は2位と悔しい敗戦。
松山がTPCスコッツデールにやってきたのは、今年が3度目だった。初出場した2014年大会の際は、米ツアーメンバーになったばかりで何もかもが初めてで不慣れで、そんな中でも優勝争いに絡み、4位に食い込んだ。
デビューしたばかりの外国人の若者にしては「立派だ」、「将来有望だ」と米ゴルフ界からも一目置かれた。
しかし、松山自身は「4位に食い込んだ」ではなく「4位に終わってしまった」という気持ちでいっぱいだった。
「勝てなかったんで……」
悔しさばかりが噴き出し、何を語るにも語尾がみんな切れていく。1年目は、そんな終わり方だった。
2度目の出場となった昨年大会は、もっと悔しいサンデーアフタヌーンになった。13番で単独首位に立ちながら14番のボギーで後退。その直後、イーグルを奪ったブルックス・ケプカに抜かれ、上がり4ホールでの巻き返しならず、1打差の2位で終戦。それは文字通りの惜敗だった。