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中邑真輔、万感の新日本ラストマッチ!
そこではいろんなドラマが起きていた!!
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2016/02/02 12:00
棚橋弘至、オカダ・カズチカ……「あとは任せた」と安心して託せる選手が多いので、憂いなくWWEに行けると語っていた中邑。
棚橋、後藤、柴田……それぞれの中邑への思い。
中邑と共に、現在の新日本における立役者である棚橋弘至と二度目に対峙したとき。試合中にもかかわらず、リング中央で棚橋が中邑に何やら言葉をかけた。
「中邑、がんばって行ってこいよ」
中邑の記憶が確かであるならば――棚橋はそう言ってから、強烈な張り手を中邑の左顔面に食らわせた。
2・11大阪でIWGPヘビー級王座に挑戦する後藤には、王者オカダの姿しか見えていなかった。中邑のラストマッチなど関係ない、敵はあくまでオカダだけ。そんな後藤の姿勢に対して強烈なブーイングが浴びせられた。そんな同期の姿を見て、試合中、中邑は「いい風が吹いてるな」と思った。
「あんな嵐のようなブーイングは受けようと思っても、そうそう受けられるもんじゃない。あれで後藤が気持ちよくなってなかったらダメでしょうね。アイツはあれでいい」
また同学年にして、新日本では先輩にあたり、そして仇敵でもある柴田。中邑との若手時代からの不仲ぶりは有名で、かつて柴田が新日本を退団した理由の1つには、中邑の存在もある。今度はその中邑が新日本を抜けることになり、「これは他のレスラーにとってチャンスなんだ」と公言しているのは、現在この柴田と内藤哲也のみである。
「ボクが去る前から、もうその態勢に入ってるっていう意味では、その2人はプロレスラーとして正常ということでしょうね。プロレスラーらしい行動をとっている」
ラストマッチに仕掛けられていたサプライズ。
ラストマッチが終わった。
中邑は四方に頭を下げ、新日本プロレスの関係者、共に闘ってきた選手たち、そしてファンへの感謝の言葉を述べた。
最後はお決まりの「イヤァオ!」とシャウト。そのままリングを降りて引きあげようとしたとき、CHAOSの仲間たちが全員、小走りでリングに駆けつけてきて、ふたたびリングに上がるよう促された。完全にサプライズだった。各面々と抱擁をする中、人目をはばかることなく涙するオカダを見て、ついに中邑の涙腺も決壊した。
「こっちは『おっし、帰ろう!』と思ってたのに、仲間が許してくれなかったですね(笑)。オカダにあんな顔をされたらこっちもね……。選手は全員特別な存在なんだけど、とりわけCHAOSの仲間は別格だなと思いましたね。なんですかね、言葉はダサいっスけど、“絆”っていうか……」