プロレスのじかんBACK NUMBER
中邑真輔、万感の新日本ラストマッチ!
そこではいろんなドラマが起きていた!!
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2016/02/02 12:00
棚橋弘至、オカダ・カズチカ……「あとは任せた」と安心して託せる選手が多いので、憂いなくWWEに行けると語っていた中邑。
「ここは世界一のロッカールームだ」
CHAOSの絆。
新日本の絆。
「あの舞台を用意してくれた新日本プロレス、それに乗っかってくれた仲間、社員、関係者。そして見届けてくれたファン。ホントにありがてえなーって。懐深いなーって」
そういえば、こんな話を聞いた。
期せずして、中邑と時を同じく新日本からWWEへと転出したAJスタイルズ。
一足早く、1月25日(日本時間)にWWEデビューを果たしているAJの新日本ラストマッチは、1月5日の後楽園ホールだった。
その控え室でAJはレスラー仲間たちに「ここは世界一のロッカールームだ」と言っていたのだという。
「世界中にはいろんなリングがあるが、どこに行ってもこのプロレスの世界ってのはギクシャクしてるもんなんだ。裏切り、足の引っ張り合いが横行している。それが新日本のロッカールームはどうだ。お互いがクリーンに競い合い、時には助け合う。こんな場所は世界中どこを探したってない。ここは世界一のロッカールームなんだ」と。
最後の最後に、“あの男”がやってきた。
その世界一のロッカールームで、ドラマは起きた――。
主役の中邑は、ほかの選手たちがみんな帰ったあとも、関係者や知人たちへの挨拶で最後まで居残ることとなった。
そして、慌ただしく着替えを終え、帰り支度をしていたところに、“あの男”がやってきた。
二言三言、言葉を交わしたが、その内容については「あえて聞かないで」と中邑は言う。
「ただ、あの人も新日本をやめるとき、たぶんものすごい葛藤と決断があったんだろうなって。ボクとは形は違えど、新日本への愛情が凄いですからね。そんな気持ちがなんとなく、そのとき言葉を交わしたことでシンパシーとして感じたような気がしますね。今回、ボクが辞めることになって、お互いに新日本への愛情の深さを察したのかな、と」
柴田勝頼という男、ロマンチックの権化である。
1月31日、中邑はその愛する新日本プロレスを正式に退団した。
「今の気持ち? 初めての無職ですよ(笑)。みんなとはこれが今生の別れじゃないんだけども、こんなにも愛されているとは……ね。でも、あれだけ気持ちよく送り出してもらえて、ボクもあれだけ感情を爆発させることができたので、翌日には本当にスッキリしてましたね。さあ、またスーツケースを広げて『行ってくるぜ!』ですよ」
お別れもすぐに済んだが、旅もまたすぐに始まる。
Enjoy your trip!