プロレスのじかんBACK NUMBER
同期の中邑とは生き様が違う。
後藤洋央紀の意地と怒りが見たい!
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2016/01/27 11:00
「今の新日本の図式をぶっ壊す!」と宣言している後藤。新日本の新たな方向性の鍵を握る存在になるやも。
「俺もあんなふうにブチ切れてみたい!」
近所に住む仲のよかった先輩が録画していたプロレス中継を見せてくれた瞬間、プロレスに心を鷲掴みにされた。中学2年のときだ。大きな男たちがリング上で暴れ回る姿は、根が穏やかな性格の後藤にとっては衝撃だった。
勉強がまったくと言っていいほどできなかったことに劣等感を抱いていた中学時代。後藤が通っていた中学は、地域でもとくに校則が厳しかった学校で、風紀にも厳格で、勉強のレベルは地区で1、2を争うほどの優秀校だった。周囲の友達がみんなお勉強ができるなか、後藤は勉強が大の苦手で、そのことが「死んでしまいたい」と思うほど、強烈なコンプレックスとなっていた。そこで出会ったプロレス。決しておおげさではなく、プロレスに命を救われたと思った。
なかでも長州力のストレートな怒りの感情のむき出し方には全身に稲妻が走った。
「このクソたわけがっ!」
長州がそう叫ぶと、「俺もあんなふうにブチ切れてみたい!」と憧れを抱いた。ひとつのことに夢中になるとほかのことが一切見えなくなる後藤は、中学3年のときに将来はプロレスラーになると決意した。勉強ができなくたって関係ない。コンプレックスを払拭した後藤は、毎日プロレスごっこをするためだけに中学に通っていた。
後藤の怒りは、長州のそれに迫っているか?
そんな中学2年のときから憧れていた新日本プロレスで人生をまっとうしたい。ある意味、中邑真輔とは真逆の生き様。生き方は人それぞれだ。
その中邑の退団直後に、オカダの持つIWGPヘビー級王座に挑戦することになったのは、ある意味、運命なのかもしれない。
王者・オカダには「何回挑戦するんだ? って思いますけどね。何回も獲れないで(※7回挑戦でいずれも失敗)……よくもまあそんなに恥をかけるなと思います」とこき下ろされ、会見場を急襲した。
「なめんなよ、この野郎!!」
私服姿でオカダに蹴りを見舞った際、ジーンズの股部分が裂けてしまったほどの怒りのヴォルテージは、長州の「クソたわけがっ!」に迫るものであるのかどうか。