フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
フィギュアシーズン前半戦の総括!
後半テーマは「誰が羽生に迫るか?」。
posted2016/01/11 10:40
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Asami Enomoto
フィギュアスケートもシーズン前半が終了し、新たな年を迎えることになった。
シーズン前半のハイライトであるGPシリーズを振り返ると、人々の記憶に残るのは何と言っても羽生結弦の世界記録更新であろう。
NHK杯と、その2週間後のGPファイナルでほとんどノーミスの演技を4本滑りきり、2大会連続で歴代最高点を叩き出した羽生の強さ――それは言葉で形容できないほど圧巻であった。
羽生の闘志を刺激した、スケートカナダでの結果。
あの演技が現実のものとなったのは、羽生結弦というスケーターが稀有な逸材だからということは当然だろう。だが羽生が今シーズンあそこまで自分をプッシュしていったのは、彼の悔しさからきた闘志だったとも言える。
スケートカナダのフリーで羽生は4回転を3度降りたが、パトリック・チャンは4トウループ一度のみだった。それでも2位に終わったとき、羽生は採点に不満を表す代わりに「全体のレベルアップの必要がある」と口にし、すぐ次に目を向けた。
この大会のエキジビションの練習中に、次の大会でSPに4回転を二度入れることを考え始め、トロントに戻る飛行機の中では既に決意していたという。そのわずか4週間後、NHK杯のSPでみごと4回転を2度降り、GPファイナルではチャンに大差をつけて優勝した。
もしもスケートカナダで羽生があっさりと優勝していたなら、NHK杯での新記録はなかったかもしれない。
悔しさを晴らす次の機会……世界選手権に期待。
悔しさを建設的に、ポジティブな方向にと向けていく彼の飽くなき上昇志向は、スポーツ界だけでなく全ての社会において通用する、とても貴重な天性である。
その羽生が、全日本では珍しくジャンプミス。4連覇を果たしたものの、「めらめらと悔しい思い」と口にするほど、不本意な演技だった。
この悔しさを、今度は3月にボストンで開催される世界選手権にぶつけてくるに違いない。王者がどのような演技を見せてくれるのか、楽しみである。