Jをめぐる冒険BACK NUMBER
J3へのセカンドチーム参戦を考える。
育成ルート多様化と、ベテラン問題。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/12/30 11:30
U-22選抜はJ3で13クラブ中12位に沈んだ。低迷が続く若年世代の育成へ向け、試行錯誤は続く。
監督を育てるためにも、実戦の場数が必要。
U-23チームを結成すれば、土曜日のJ1で試合に出られなかったり、数分しかプレーできなかったりした若手選手が翌日にJ3のピッチに立ち、実戦経験を積めるようになる。
もちろん、J3で活躍した若手選手がシーズン途中にトップチームのレギュラーに抜擢される、ということも起こり得るだろう。
また、U-23チームにはアカデミー所属の選手も起用できるため、トップチームに昇格する前に公式戦デビューし、経験を積むユース年代の選手の数も増えるに違いない。
そしてバルセロナとグアルディオラの例ではないが、U-23チームは若手選手のみならず、指導者を育てる場としても有効だ。
トップチームの監督になる前段階としてトップチームのコーチを経験する、という道は確かにある。ただし、ヨーロッパや南米ではコーチは専門職と考えられているように、監督とコーチは似て非なる職業だ。身近で監督の仕事を観察することはできるが、あくまでも監督の指示に従い、監督をサポートするのがコーチの役目。そこには決定権もないし、チームの成績に対して直接的に責任を負うこともない。
あるいは、アカデミー(U-18やU-15)の監督を経験するという道もある。その場合、決定権を持つことができ、責任も生じる。ただし、アカデミーの最大の目的は選手を育成することにある。アカデミーの監督にはその道のスペシャリストが就き、ある程度長い期間にわたって指導するのが理想だろう。
もちろんU-23チームも育成を意識したものではあるが、アカデミーとは異なり、れっきとしたプロ集団。しかも、参加するのはJ3リーグである。J2昇格を本気で目指すチームとの真剣勝負は、若手選手だけでなく指揮官にとっても貴重な経験となるはずだ。
23歳以上の選手は練習相手がいなくなる可能性も?
とはいえ疑問がないわけでもない。例えば、23歳以上の選手はどうなのか。
オーバーエイジの起用が認められているが、あくまでも3人プラスGKが1人だけ。しかしながら、実際にはどのチームにも、毎試合スタメンを張れているわけではないベテラン選手や中堅選手が4人以上はいるものだ。
そうした選手たちにとって、公式戦翌日に組まれる練習試合は、試合勘を鈍らせないための貴重な場だったが、U-23チームが結成され、J3に参戦するようになると、練習試合が組めなくなる。トップチームのコーチングスタッフはJ3の視察に赴くだろうし、U-23チームを結成すれば、それとは別に練習試合を組むだけの人数が揃わないからだ。