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もうひとりの“帰ってきた男”、
1年間広島を支えた新井貴浩の献身。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/12/23 10:30
プロ通算17年のうち、阪神に在籍したのは'08~'14年の7年間。来季は広島で11年目のシーズンとなる。
自分は主役じゃなく、脇役でいい。
来年1月に39歳となる。定位置を譲らない気持ちと同時に、若手の奮起に物足りなさを感じることもある。広島が強くなるためには世代交代し、新たな主力選手が育っていかないといけない。危機感はある。
シーズンオフのトークショーで「キク(菊池涼介)や丸(佳浩)、(田中)広輔、會澤(翼)。若い選手が頑張って引っ張ってほしい」とエールを送ると、新外国人の元中日ルナ獲得が発表されれば戦力アップを歓迎しつつ若手にハッパを掛けた。
「僕自身も競争。若手は負けないぞと思ってやって欲しい。お互い競争してチーム力が上がればいい」
自分は主役じゃなく、脇役でいい――。
チームのことを思うがゆえの熱いエールだった。
優勝しかない。個人的な目標はない。
今年1年ともに戦った若手がどのように感じ、グラウンドで表現するのか。本当の意味での新井効果は来季以降に見られるのかもしれない。
来季は、広島入団から前年まで16年間背負い続けた愛着ある背番号の25に変わる。残り29本とする2000安打達成もかかっている。周囲は変わらず主役級の期待と注目をするだろう。しかし、新井は何も変わらない。
「優勝しかない。優勝してファンの方に喜んでもらう。それしかない。個人的な目標はない。打てるだけ打つ。とにかく自分が1年間必死になってやる。そういう姿を見て何かを感じてもらえればと思っている。そういうスタンスは変わらない。その中でしっかり結果も出していきたい」
ただ優勝のため、チームのために全身全霊すべてを注ぐ覚悟でいる。39歳で迎える来季も、新井は新井のままだ。