プレー以外にも着目する日本ハムのスカウティング。

　世間的に当然とみなされていることだとしても、素人でもわかることを答えとしない。

　固定観念に縛られず、選手の力が最も引き出される方策は何かと考える。それが日本ハムの考え方だ。チームに確固たる思想がなければできないことだろう。

　日本ハムのスカウティングでの注目すべき点は、プレーだけでなくそれ以外の部分でも選手を見極めているところだ。

　人格の良さ、悪さも含め、心の底に眠っているパワーがどれだけあるかにスポットをあてている。プロの世界で戦っていくための、持っているものを爆発させるだけのエネルギーがあるかどうか。それさえあれば、どんな壁も乗り越えることができるという見立てを持っている。

「やるんじゃないかと思わせてくれる」

　今月初旬、取材に応じてくれた大渕氏に、平沼の今回の構想について尋ねた。すると彼が着目しているのは、平沼の人格というより、持っているエネルギーの大きさだという。

「やんちゃな子であるという噂を耳にしましたけど、性格的なものは高校生ですから、まだまだ学ばないといけないところはあると思います。でも、彼には光るものを感じましたね。もちろん、ショートをやれる選手であってほしいという球団の思惑もありますが、それ以上に彼は（難しいことでも）やるんじゃないかと思わせてくれるようなものをもっている。それだけの人物だと思いました。希望はもってプロではスタートしてほしいんです」

　野手転向ならサードか外野手だろうという一般論があるのも、日本ハムのスカウト陣は知っている。だが彼らは、平沼翔太が難しいことを果たしていける人間だと期待しているのである。大渕は続ける。

「（平沼は）田舎の子で、地元の鯖江から、福井にいった。中学のクラブチームの総監督だった小林繁さん（故人）から『日本一になれ』と言われて日本一を目指すと誓ったそうなんですね。それも福井の敦賀気比から日本一になるんだと。当時、敦賀気比が全国の上位チームだったかというとそうではなかったと思うんです。でも、そこで日本一になるんだと思いをもって、実際に果たした。すごいことを成し遂げているんですよ。これは、なかなかできることじゃない。普通に考えたら無理だと思うようなことをやったんだから、彼ならすごいことをやるんじゃないかという光をみたんです」

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