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打っても打っても入らないシュート……。
コービー・ブライアント引退、心の内。 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byGetty Images

posted2015/12/04 18:20

打っても打っても入らないシュート……。コービー・ブライアント引退、心の内。<Number Web> photograph by Getty Images

引退宣言は記者会見ではなくツイッターで発表され、デレク・ジーターらと共に運営しているネットメディアに掲載された。

自分のプレーを「クソったれ」と認めたこと。

「本当に安らかな気持ちでこの決断を下した。ずっと力の限りの努力をしてきたし、これからもしていく。今の僕はクソったれなプレーをしているけれど、でも、クソのようなプレーをしないために、本当に全力で努力している。できる限りのことをすべてやっている。そのことに満足感を感じている」

「今のこの苦しみに喜びを感じるんだ。奇妙に聞こえるかもしれないけれど、うまくいっているときと同じぐらい、うまくいかないときも楽しんでいる。自分について本当にわかるのは、そういう時だからね」

「もうディフェンスを抜き去ることができないことに素晴らしさを見出している。朝起きて、痛みを感じるのもいいことだ。それだけハードワークをしてきたからこその痛みだとわかっているから。悲しくはない。これまで経験してきたことに感謝している」

 これまで、選手としてのブライアントは、常に“完璧”を目指してきた。理想は穴のない選手。オフェンスもディフェンスも手を抜くことなく、相手がどんなプレーをしてきても、状況に応じて瞬時に判断を下し、細かな微調整をすることで対応してきた。

 そんな彼が、今の自分のプレーを「クソったれ」だと認め、現役引退を前に、不完全であること、うまくできないことを楽しんでいるというのだ。

 聞いた時には少し意外に感じたのだが、よく考えると、これほど彼らしい言葉はないのかもしれない。

完璧を求め続けたからこそ知る、己の不完全さ。

 意外に感じたのは、表に見えるブライアントの完璧主義な面しか見ていなかったからだ。

 しかし、実際のところ、完璧を求めてきたからこそ、彼は自分がいかに不完全なのかを誰よりもよく知っていたのだ。それを克服しようとした日々こそが、ブライアントの選手としての真骨頂だった。

 不完全なことを受け入れて諦めるのではなく、どうすればそれを完全な状態に近づけることができるのかを模索してきた。それは、最盛期にはほど遠いプレーをさらけ出している今シーズンも同じことだ。

 会見でブライアントは、こうも言っていた。

「(引退を決めた今でも)頑張り続ける。努力をやめることはない。朝ウェイトをし、毎日3回ストレッチする。今夜、家に帰った後にもストレッチをする。アイス・バスにもまた入る。明日の朝起きたら、飛行機に乗る前にまたウェイトをする。途中で投げ出すことはない。努力し続ける。何か解決策を見つけられないか挑み続ける。それが僕のやり方だ。決して屈服することはない。(いいプレーができていないことを)受け入れ、理解している。あとは、どうすればいいかを見つけることさえできれば……。最善を尽くす。努力し続ける」

【次ページ】 「そうだ、コービー! 打ち続けろよ!」

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